……何。
嫌だ、断る?
この家に来てから一方的な条件ばかり押し付けといて、よくもそんな事が言えるね。
断らせないに決まってんじゃん。
一瞬だけひねり返した水道の蛇口を再び全開にした和葉は、次の作戦を施行した。
「うあ゛あ゛あ〜〜ん。そんなの割に合わない。不幸のオンパレードの私がそんな些細なお願いすら聞いてもらえないなんて」
「……は? 休む場所なんて俺の部屋じゃなくてもいいだろ。しかも、一旦泣き止んだのにまた泣くなんておかしくない?」
「いいもん。じゃあ、今度の全校集会の時に、屋上から『拓真は元暴走族だぁー』って、大声で元暴走族だった事をバラしちゃうから」
「それは、この前誰にも言うなって言ったばかりだろ。(コイツならやり兼ねないな)」
「ほんの小さなお願いしかしてない私に、意地悪ばかり言うから悪いんだよ」
「わっ、わかったよ。しょーがねぇなぁ」
和葉は頭頂部から渋々とした返事を受け取ると、ほくそ微笑む。
拓真と居間で別れてから二階の部屋に到着すると、布団の中に入り込んで枕に顔をうずめて泣いた。
くっそ。
拓真のバカヤロー。
人がショックで落ち込んでるんだから、少しは優しくなだめてくれたっていいのに。
しかも、妖怪とか悪霊退散って何様のつもりよ。
いつもいつもいつも、意地悪すぎるんだから。
わんわんと泣いてるうちに紺色の枕が涙で湿っぽくなり、うつ伏せ状態のまま顔を上げてみると、枕は涙と鼻水とよだれで目と鼻と口の部分だけ湿った。
それは、まるで顔拓と言わんばかりに……。
しかも、口元のよだれの付着具合が微妙に笑ってるように見えて少し怖くもあった。
「うあぁ〜ん。お化けぇ。枕ちゃんに顔が出来ちゃったよ」
明らかに自業自得だが金髪を失ったショックの方が勝って、再び枕に顔を埋めて狂ったように泣き始めた。



