本当にショックを受けた時って、何故か涙が浮かんでこない。
徹夜で遊び呆けて人の家で昼寝をしてしまった自分にも非があると認めてしまったから?
だけど、悲痛な叫びは届かず……。
「お礼なんて別にいいわよ。少し手を貸してあげたかっただけだから」
「はぁ? ……あ、……はぁ」
お婆さんは悪びれもなくそう言い残した後、山積みの洗濯物を持ったまま廊下の奥へと去って行った。
現況を飲み込めないくらい撃沈している和葉は、思わず口元が歪む。
別に余計な親切なんて要らなかったのに。
それより知らぬ間に金髪を失ったんだから、今すぐに元通りにしてえぇぇ……。
何故か拓真家に足を踏み入れる度に不幸が訪れる。
今日は幸せな未来しか描いて来なかったのに。
和葉は洗面所からよろめきながら居間に戻って襖を開けた。
すると、テレビを観て寛いでいた拓真は、座敷童子ヘアーになった和葉の姿を見た途端、吹き出した。
「プーッ!! シャワーキャップを脱いできたと思ったら……。髪が金から黒に変身してカメレオンみたい」
「笑わない。見ない。無視して」
「なになに、何で黒髪になったの?」
拓真は寛いでいた身体を起こして興味津々に問い尋ねてくる。
普段は全く私に興味の興の字すら示さないクセに、人が不幸を迎えた時に限って興味を示すなんて。
本当にムカつく。
「お婆さんが私の金髪を見て傷んでて可哀想だと思って白髪染めで染めたんだって。寝ている間に人の髪を勝手に染めるなんてヒドイでしょ。黒髪のおかっぱ頭なんて座敷童子みたいだよ」
「バカなお前にしちゃ例え上手。マジで座敷童子そっくり。ププププーッ!」
「……っ! これ以上バカにしたらグーで殴るよ」
拓真にとっては小さな事かもしれないけど、私は爪を失った時以上にショックを受けているのに。
ところが、拓真は和葉の思いも知れずに追い打ちをかける。



