着替え終えてから二人揃って畑の前に並ぶ。
拓真は備中鍬を片手に持って、和葉には掘り起こし器を渡した。
「今日は先日草むしりをした箇所を耕していこう。種植えの前段階だ」
「またこの前と同じ場所で作業するの?」
「そうだ。とりあえず昼までを目標にして頑張ろう。……いいか、つまらなくても絶対にサボるなよ。一度でもサボったらデートは白紙に戻すからな」
「えーっ! 先日は腰が曲がるくらいクタクタになったのに、今日はあの日以上にレベルが高いじゃん」
「文句を言うな。しっかり働いて大地の恵みの有難さを存分に味わえよ。バカで変態のお前には人様よりキツイ試練が必要だろ」
「バカで変態って何よ! 女の子に向かって失礼ね」
カッとなってブーブー文句を垂れる和葉に、無視をして作業位置へと向かって歩く拓真。
二人の距離は縮まるどころか失態により遠くに離れていく一方であった。
はぁ、やだなぁ……。
畑には日差しを遮るものがないから、こんなにカンカン照りの炎天下の中で作業してたら、シルクのように繊細で白くて美しい肌が、まるでゴキブリのように真っ黒焦げに日焼けしちゃう。
しかも、昼までに畑を耕せって命令されても。
今からだと、残り三時間半しかないじゃん。
まだ草むしりしかした事のないから、いきなりプロ的な指示をされても困るんだけど。
でも、仕方ない。
約束したからやるしかないか。
これも、デートの為。
一度でもデートにこぎつければ、あっという間に愛らしい私の虜になるはず。
だから、あと少し辛抱すればいい。
和葉は暗く沈んだ心を宥めながら、晴天の下で作業を進める事にした。
前回同様、拓真とは作業開始位置が違う。
長時間無言で土いじり。
あーあ、退屈で死にそう。
手と足を動かしていても、つまらな過ぎてあくびをした瞬間足元がふらついたよ。
こんなに眠いのは徹夜で遊んでいた事が原因だ。
眠いからと言って畑の中で寝る訳にはいかない。
もし畑で寝てしまったら、拓真じゃなくて作物を狙ったカラスに襲われちゃうかもしれない。
あいつは意地悪を通り越して死神だから、助け出すどころか腹を抱えて笑ってそう。
わざわざ瞼を閉じなくてもその光景が目に浮かぶよ。



