拓真は作業着を渡して部屋を出ていこうとしていたが、ハッとある事を思い出して振り返った。
「着替えの為に部屋を貸すんだからな。勝手にあちこち触るなよ。いいな!」
冷淡な目つきは、戸惑う和葉の目を泳がせる。
ギクッ。
何でバレたんだろう……。
タンスの上の写真を見た事は素直に白状したけど、閉めたはずのタンスの引き出しを開けっ放しにしたまま部屋を出ちゃったかな。
あーあ、失敗失敗。
しかし、物に触れた事を素直に認めたくないあまり減らず口を叩く。
「そんなのわかってるっつーの! 私は拓真より一つ年上のお姉様よ?」
「だから、何だ」
何故か拓真には年上効果は薄い。
説得力の欠ける言い訳は、いつも簡単に弾かれてしまう。
拓真は半信半疑の目を向けたまま、パタンと扉を閉めた。
和葉ドアが最後まで閉まりきるのを確認してから、鋭い眼光を放った目線は枕へ。
ふっふっふ……、枕ちゃん。
お・ま・た・せ!
拓真は部屋から出て行ったから今なら誰にも邪魔をされないよ。
会いたかったよ。
今から根こそぎ拓真の香りを嗅いであげるからね。
だが、ガバッと勢いよくベッドにダイブして枕に顔を埋めた瞬間。
ガチャッ……
悪巧みをしていた心が見透かされたかのように扉が開く。
拓真は自分の枕に満面の笑みで頬ずりしている和葉の姿を見るなり落胆して深いため息をついた。
「………はぁ。やっぱりな。勘弁してくれよ」
拓真は異常行動に頭を抱えてよろめきながら部屋を去って行った。
……えへへ。
どうやら私の考えはお見通しだったみたい。
そろそろ通報されそうなレベルまで達してきたから、枕ちゃんとは暫くお別れをする事にした。



