翌日の日曜日。

バイト上がりに祐宇達と約束していたクラブに直行した和葉は明け方に帰宅。
のんびりシャワーを浴びていたら、すでに出発の時間に。


洗面所でドライヤーで髪を乾かしてる時にふと鏡で顔を見ると、目の下にはものすごいクマが出来ている。
徹夜だったせいか、肌のハリとツヤと潤いが足りない。



でも、久々の夜遊びはストレス発散になった。
特に昨日の迷惑なクズ男が追い討ちをかけてきたから、息抜き出来て精神的に助かった。



時計と睨み合いを続けていた和葉は、約束の時間が迫り気は焦る一方。



服は後で作業着に着替える事になるから、取り敢えず着ていれば何でもいいや。
デートを白紙にされたくないから、初日から遅刻しないようにね。



和葉は家を出てから電車に飛び乗ると、早速電車の中で鏡を開いてメイクを始めた。

揺れる車内でのつけまつげの装着は少しレベルが高い。
しかも、酔いで手元がオボつき目の周りはつけまつげ専用のりでベトベトに。

まぁ、のりは透明だし、どうせ後で乾くからそのままでいいや。



悪酔いは美意識までも失わせる。

口から漏れ出す息はまだ酒臭いが、何とか電車の長い旅を終えて、拓真が待つ畑に到着した。


拓真は先に畑に入って作業を始めている。
一方の和葉は、到着を知らせるように遠目から大きく手を振り大声を発した。



「お〜い、拓真ぁ。お待たせ。和葉が到着したよぉ。待ちくたびれて寂しかったでしょう」



気付いた拓真は、作業していた手を止めて軍手を外して和葉へとゆっくり近付く。

ところが、1メートル近くまで接近したところで、急に顔を歪ませて嫌そうに口元を手で覆った。



「うわっ、酒臭せっ。しかも、その格好……。これから農作業をするのに、やけに挑発的だな」



まるで生活指導の先生のような、厳しい口調が届く。
和葉は服を選ぶ時間がなくて、昨晩クラブに着て行った服をそのまま着て家を出て来た。

ちなみにその服装とは、胸元がガッツリ開いた超ミニの黒いワンピースにシルバーのピンヒール姿。

しかも、ピンヒールは地面にブスリと杭を刺したかのように土の中に埋まっている。



「何か悪い〜? これが私のし・ふ・く。ウフフ、目のやり場に困っちゃうくらいセクシーでしょ。……ま、お子ちゃまには5年くらい早いけど、目の保養になっちゃうかもしれないねぇ〜」



前日の酒が抜けきれていないホロ酔い気分な和葉は、足元をフラつかせてヒールでブスブスと穴を増殖させながら悪態をついた。