拓真の自宅を出てから暫く経った頃。
着替えの際に見た暴走族の写真を思い出した。
「ねぇ、タンスの上に写真が飾ってあったけど、写ってるのは弟さん? 拓真って兄弟そっくりなんだね」
横から関心を向けたように問うと、無表情拓真の左眉はピクリと動く。
しかし、目線は前に向けたまま。
「年の離れた姉はいるけど弟はいない」
「じゃあ、写真の人は?」
ズカズカと土足で入り込むストレートな質問に、拓真は苦笑する。
「………あれは、昔の俺」
「えっ……。あの暴走族少年が?」
「はっきり言うなよ。……あ、この事は誰にも言うなよ。言ったら承知しねぇからな」
拓真は不意打ちを食らうと、気まずさのあまり手で顔を覆った。
えっ……。
あの写真の人物は拓真なの?
今とは雰囲気が違うし幼いから、てっきり弟かと。
「特攻服を着てバイクにまたがっているヤンキーは、拓真本人って事?」
「それ、俺に対しての悪口?」
「いやっ、そうじゃないけど……」
拓真は度重なる質問に嫌気がさし始めると、冷ややかな目つきを向ける。
和葉は語り口調からして、これ以上突っ込んで聞いてはいけないような気がした。
写真を見た時は、正直拓真と似てるなって。
その上、メガネを外した時はやはり本人じゃないかって疑ったりもしたけど、まさか本人とは……。
普段から怒りっぽくてツンケンした態度は、暴走族時代の名残なのかなぁ。
「もう更生したから。これからは普通に生活していきたいし」
ポツリと呟いて月夜を見上げた拓真は、それ以上語ろうとしなかった。
暴走族を辞めたのには、何か理由があったのかな。
過去を隠したい理由は何なのだろうか。
切ない瞳で空を見上げた拓真の重苦しい空気は、自然と和葉の口を塞いだ。
でも、よくよく思い返してみると、部屋で頬ずりした枕はやっぱり拓真の物だったの?
あれだけ何度もチューやモフモフしといて、別の人の枕だと思ったら逆に恐怖だけど。
実は拓真自身の香りが好きなのかも。
だから、香りに惹かれちゃったのかもね。
……えへへ。
ごちそうさまでした。
また近々枕ちゃんに会いに行くからね。



