「なんだ、コーラを買いに行ってたんだ。畑にいなかったから、てっきり家に帰ったのかと……。あっ、それと私の範囲の分まで手伝ってくれたんだね」
「初心者がいきなり100%をやるのは無理だからな」
「そう思うなら最初からハンデちょうだいよ」
「最初からハンデなんて与えたらサボるだろ。しっかし、お前の袋には穴が開いていたのか? あちこちに雑草が散らばってるし、畑がぐっちゃぐちゃじゃねーか」
拓真が指をさした先を見ると、言われた通り歴然の差があった。
彼が作業した畑は綺麗に雑草がむしり取られてるのに対し、私が作業した畑は所々に雑草のカスが落ちている。
「あ、ホントだ。拓真の作業面と比べると本当に汚いわ」
紛れも無い事実に頷く他あらず。
「でも、最後まで諦めないで頑張ってくれてサンキュ。助かったよ」
と、拓真は和葉の顔を覗き込み微笑んだ。
年下のクセに上から目線だし、私を子供扱いして生意気。
……でも、何でかな。
理由はよくわかんないけど、奴の笑顔に翻弄されてる自分がいる。
「……だって、拓真と約束したから」
カアッと赤面した表情を隠したくなった和葉は、泥だらけになっていた袖で鼻をひと擦りした。
すると、コーラを口にしながらその様子を見ていた拓真は、袖で鼻を拭った際に付着した鼻の泥に気付く。
「……ついてるぞ。顔に泥が」
「えっ。どこどこ?」
和葉は指摘されて、確認するかのように顔をあちこち触る。
すると、顔はあっという間に泥だらけに。
和葉の不器用な手つきを見るなり、拓真はもどかしさが生じる。
「違う、そこ! 汚い軍手のまま顔をあちこち触るから逆に泥の範囲が増えてんぞ」
「えっ、どこどこ? わかんない。右? 左?」
和葉はコーラと軍手を脇の下に挟んで、両指を使ってパッパと頬を軽く払った。
鏡の入ったカバンが部屋に置きっぱなしだから、急にそこと言われても目で確認する事が出来ない。
指摘された箇所は顔としか言われてないから、指先は次に顎の方へと向かった。
なかなか鼻の泥へと辿り着かない焦れったさにしびれを切らした拓真は、指を和葉の顔に近付ける。
「バーカ、ここだよ」
拓真の親指が和葉の鼻頭の左から右にスライドをして泥を拭き取る。
一方の和葉は不意打ちを喰らった瞬間、スコンと記憶が飛んだ。



