コイツ……。
なんて、身勝手な男なの。
……ってか、農作業するなんて今さっき知ったばかりなのに、ネイリストに可愛く仕上げてもらった爪を本人の許可なく全部切り落とすなんて。
絶対に許せない。
沸々と湧き上がる怒りは、本日最大級。
ワナワナと震えた肩はコントロールが利かない。
普段はアピールばかりを繰り返していたグロスたっぷりの唇は怒りの噴火口となった。
「バカじゃないのっ! 人の爪に何すんのよ! それにこの爪がいくらかかってると思ってるのよ!」
「こんなに長く伸びきった爪じゃ雑草が指でつまみにくくなって、作業効率が悪くなるだろ」
「そんなの知らない。私の爪を早く返して!」
「切り落とした爪をどうやって返すの? 爪ならまたすぐに伸びるだろ。ほら、軍手を貸すから手を通せ」
一切感情を乱さない彼のポケットから次に出されたのは、可愛げもない普通の軍手。
悪事を働いたクセに悪びれた様子を伺わせない。
完全にどうかしてる。
自分の爪なら未だしも、大事に大事に手入れしていた人の爪を許可なく切り落とすなんて。
まさか……。
これは、さっき枕に頬ずりしていた仕返し?
あんなの小さなアクシデントだから、見て見ぬ振りをしてくれたっていいじゃない。
今回のネイルは結構高かったんだよ。
だから、少しでもいい状態が保てるように、大事に手入れしてきたのに。
もし、奴と上手くいって臨時収入が入ったとしても、美容院とネイル代とクラブ代ですぐに消えちゃう。
お金………、はぁ。
拓真は爪を切り終えてご満悦な様子。
一方の私は、悔しくてガックリと肩を落とした。
バカ男。
もー、アンタなんて一生大嫌い。
三つ指ついて土下座をしても、絶対許さないんだからね。



