『手を出せ』と言う事は、まさかこの私と手を繋ぎたいの……?
さっきまでは興味ないとか、素っ気なくて冷たかったりしたけど、なんだかんだ言っても、やっぱり私に気があるのかもしれない。
まぁ、確かに私と手をつなぎたがる男は空に浮かぶ無数の星屑ほどいるけど……。
先ほどまで蒸気のように沸騰していた気持ちは、何故か拓真のひと言で全て帳消しに。
和葉は言われた通りに手を出し、拓真の手をギュッと握りしめた。
すると……。
「バカッ! 誰が俺の手を握れと言った。そっちじゃねーよ。パーだ! じゃんけんのパー!」
拓真は眉間にしわを寄せると、一旦手を勢いよく振り払った。
それにより、和葉はムスッと表情を曇らす。
「えーっ。違うの? 拓真が手を繋ぎたいかと思った」
「……ったく。女として興味がないお前の手なんて握るわけねーだろ」
愛のないセリフは柔和しつつあった気持ちを逆撫でする。
和葉はふくれっ面になりながらも、言われた通り手をパーにして差し出した。
「はぁい」
……と、だるさ混じりの軽々しい返事をした、次の瞬間。
想像を絶する出来事が和葉を待ち受けていた。
拓真はポケットに手を突っ込み、予め中に潜めていた爪切りを取り出し、和葉の手首を押さえつけて親指から順々に爪を切り始めた。
パチン……パチン……
「え……」
拓真はラインストーンで飾られた爪を次々と切り落としていく。
和葉は瞬く間に失っていく爪を見るなり言葉を失わせる。
う……そ…………。
水色ベースで夏をイメージしたラインストーン入りのネイルを、当人の許可なく次々と勝手に切り落としてくなんて。
この爪、一体いくらかかったか知ってんの?
「あわわわわわわわ……」
「ラインストーンが畑に入ったら困るだろ。それに、こんな魔女みたいな爪じゃ農作業出来ない。畑は神聖な場所だ。忘れやすい頭に叩き込んでおけよ」
和葉はパニックのあまりに禁断症状に陥っていたが、次々とカットされていった爪は、最後の指の爪まで綺麗さっぱりに切り落とされた。
顔面蒼白のまま中途半端に飾られた爪を目の前にかざすと、猛烈に悲しみに襲われて瞳に涙が浮かび上がった。



