バラのように美しく輝かしい人生の中で、失恋という初の痛手を経験した日の放課後。
約束通り、一年三組の下駄箱に向かった。
奴は口を開く度に毒を吐くから半分信用してないけど、先に待ち伏せている私は悔しい事にやっぱり振り回されている。
拓真は靴に履き替えると、和葉に何も伝えぬまま付いて来いと言わんばかりの合図を目で送る。
和葉は歩幅を考えずに先を進む拓真の後を小走りで追いかけた。
身長が153センチのスモールサイズの私と、180センチ超えと思われるビッグサイズの拓真。
足の長さが違うから普段歩いてるペースじゃ追いつけない。
後ろでハァハァと息を切らしても、彼は全くお構いなし。
追いかけてる足音が聞こえているなら、少しは気にかけてくれてもいいのにさ。
スラリとした長身でスタイルの抜群。
肘まで捲ったワイシャツから覗かせている日焼けした腕は、筋が浮き出た筋肉質で逞しい。
小さな頭に広い背中。
長い手足に細くくびれたウエスト。
不揃いに揺れる黒髪。
筋肉マニアの私はセクシーな体型に思わず唾をゴクリと飲み込む。
「筋肉がステ……」
本音が漏れた瞬間、ふと我に返り慌てて口を塞ぐ。
待て、早まるな。
あいつは悪魔。
いや、死神。
『筋肉がステキ』だなんて言ったら、また槍シャワーが降り注いでしまう。
奴の心の中は墨汁以上にドス黒いんだから。
ダメダメ、私。
早く目を覚まして。
拓真は和葉のひとり言に気付くと、無表情のまま振り返る。
「……ん、なんか言った?」
「私が……? 言う訳ないじゃん」
強気な返答は、今朝告白したばかりとは思えないほど可愛げがない。
「何だ……。ひとり言かよ」
素っ気なくそう伝えると、拓真は再び前を向いた。
これが、学校を出てから初めて交わした会話。
和葉は時間経過と共にフラれた実感が沸くと、告白直後よりも気分が沈む。
微妙な距離感に会話は生まれない。
告白なんてしなければ関係はもう少し良好だったかもしれないけど、思い切って告白をしたからこそデートが出来るようになった。
だから、どこかで気持ちを立て直さなければならない。



