「1年3組ィィ、弘崎拓真ぁあぁぁーーーっ!!」



和葉が全身の力を使って大声で名前を叫ぶと、1年3組の生徒のほとんどが一斉に拓真へ目線を向けた。
すると、つられるように他学年や他クラスの生徒達も一斉に目線を吸い寄せた。

渦中の人物の拓真は、恥ずかしさのあまり片手で額を押さえる。



「あいつめ……。大胆に名前を呼びやがって」



しかし、和葉はエンジン全開で拓真の気持ちなどおかまい無しに続けた。



「今日までいっぱい傷付けてごめんなさい! 毎日反省してます。拓真の顔を見て謝る方法がこれしか思い浮かばなかったから、こんな謝り方で許して欲しい」



謝罪の言葉を口にした和葉は、手を前に揃えて丁寧に頭を下げた。



「私は拓真が好き! 例え許してくれなくても、これ以下の気持ちは存在しない。最初はバカにされたり、無視されたり、突き放されたりして正直嫌な奴だなって。ツンデレなんて面倒臭いなって思ってたけど、毎日気持ちのやりとりをしているうちに、あんた以外の男が目に映らなくなった。

私達の間に度重なる障害が訪れて、時には忘れなきゃいけないって。それに、拓真の笑顔を自分の手で消してしまった事が、今までで一番辛かった。でも、どうしても諦めきれなかった。その理由は、どうしようもないくらいあんたが好きだから。……っ、だから……だから……」



拓真を好きになったあの日から今までの膨大な想いが血流に乗ったように全身に伝わっていくと、身体が大きく震え出した。
そして、最後に大きく息を吸い込んで、精一杯の力を込めて口を開いた。



「私と付き合って下さいっっ……! もう二度と傷付けたりしないと約束します。だから、お願いしまあぁあぁぁす……」



小さな身体を大きく震わせた和葉は、100パーセントの想いを込めて再び頭を大きく下げた。
5ヶ月分の想いが込められている告白は地上へと響き渡る。


きっと、職員室で待機している先生達にも聞こえているだろう。
騒ぎを起こしたから、私を連れ戻しに来るかもしれない。

だけど、今はそんな事どうだっていい。
真っ直ぐに伝えた想いが、拓真一人だけに届く事を信じて……。



静寂に包まれる校庭。
モテ女で有名な和葉を一度断った経験のある拓真の返事を待つばかり。

当然、生徒達からの目線で拓真への返事が催促される。


大きなプレッシャーを感じる中。
拓真は告白からおよそ15秒後に重く閉ざしていた口を開いた。



「興味ないっ。……………………お前……以外」



派手な告白を受けて立ちくらみがするほど恥ずかしい思いをしている拓真だが、最後は和葉の目を見て想いを伝えた。

すると、予想外の返答が届いた和葉は、まるで思考回路が停止してしまったかのように頭の中が真っ白に。



う……そ………。
いま……何て…………。



和葉は信じられない様子でおぼつく足取りで2、3歩後ずさった後に腰が砕けてしまい、ペタンと地面に座り込んだ。