「和葉にライバル宣言をした時、『正々堂々と勝負しよう』と伝えたはずなのに、言った張本人が先に約束を破ったから引きずってたみたい。落ち着いたら直接謝りたいって」
「約束を破っただなんてそんな……。私はそう思ってなかったから、ちょっと意外。でも、ずっと気にしていてくれたんだね」
「藤田さんって芯の強い子だね。拓真と別れた直後で辛いのに、ライバルの和葉に謝りたいなんてビックリしちゃった。黙って話を聞いてた私達もあの子の強さに圧倒されたよ」
「うん……。数々の山場を切り抜けてきた私でも栞ちゃんだけは全く歯が立たなかったよ。あはは……」
最後まで強豪な姿勢を崩さなかった栞を思い返した和葉は思わず苦笑した。
栞が拓真を手放すなんて思いもしなかった。
拓真自身も一生償っていくつもりだったから、この先も長く付き合っていくのかと。
二人が別れた理由はわからないけど、きっとお互いが納得いくような別れ方をしたのだろう。
お互い話の要点を伝え合って三人の気持ちが一つに重なり合うと、和葉は次第に本調子を取り戻し始めた。
まだ冬の香りが残る風を浴びて身体は冷たくなっていたが、大泣きした事もあってか少し血液循環がよくなってほんのりと身体が火照っている。
話を終えた三人は月夜が照らす暗闇の中、駅へと向かって歩き始めた。
すると、街灯を浴びながら雑談をする和葉と凛のうしろで、何かを考えながら歩いていた祐宇は和葉に気になっていた質問をぶつけた。
「話は戻るけど、この先はどう考えてるの?」
「えっ、この先って?」
「拓真に謝るだけでいいの? 仲直りした後の事はちゃんと考えてる?」
和葉は祐宇の質問に進めていた足をピタリと止めた。
確かに今の目標は拓真と仲直りをする事。
そして、以前のように関係改善出来ればいいなと思っている。
しかし、現状はそこまで達していないから、仲直りした後の話なんて贅沢過ぎて考えられない。
「まだ自分でもどうしたらいいか……。謝罪は受け入れてもらえないし、拓真は栞ちゃんと別れたばかりだから気持ちが不透明なままだし……」
「謝罪を受け入れてもらえない話はまた別として、栞ちゃんと別れたなら和葉にもチャンスはあるんじゃない?」
「チャンスと言われても……。別れた理由を知らないから、この恋はどこまで足を踏み入れていいかわかんないし……」
和葉は気持ちが低迷するあまり浮足のまましどろもどろな返答を繰り返していた。
ところが、それまで黙って聞いていた凛は、拓真を好きだという気持ちには変わりないのに曖昧な返事を繰り返す和葉を見ているうちに本音が漏れた。
「何グダグダ言ってんの」
「えっ?!」
「謝罪は受け入れてもらえないだの、拓真の気持ちが不透明だの、恋はどこまで足を踏み入れたらいいだのって、さっきから自分に都合のいいように言い訳ばかりして情けないと思わないの?」
「な、情けないって……。それはちょっと言い過ぎじゃ……」
和葉は凛の白黒ハッキリしたストレートな言動がグサリと突き刺さった。
それが彼女の悪いところではあるが、いいところでもある。
「あんたは天下一モテ女のLOVE HUNTERでしょ。狙った男は必ず落とす自信があるんでしょ。以前は口癖のように毎日言ってたじゃん」
「あ、うん」
迫力満点の凛に押され気味の和葉は、首を軽く縦に振り、少し遠慮がちに返事をした。



