LOVE HUNTER



今逃げようもない状況に立たされている事はわかった。
二人が心から心配してくれている事もわかった。

でも、私は最後の最後までトラウマという固い殻を破ってしまう事に怯えていた。



「あんたは本気で恋に落ちてから賭けなんてどうでもよくなっていた。恋が始まってからあいつに夢中だった。ライバルが現れても、賭けをした事が張本人にバレて辛い想いをしても、あんたは悩みを胸の中にしまったの」

「……っ」


「どう、合ってるでしょ? 私と祐宇はあんたについて散々相談してきた。様子がおかしいと思い始めてからずっとね」



凛は強気な姿勢を保たせたまま最終確認をした。
しかし、和葉は困惑したまま口を閉ざす。



「あんたには私達がいるのに、辛い気持ちを胸にしまい込んで自己解決していた。晴れた表情に繋がらないのは、問題を解決出来なかった証」



合ってる……。
だから、反論出来ない。



和葉は二人から目線を外して俯いた。
その間、心の中で葛藤が繰り返される。



親友……。
そう、二年生の新学期が始まった4月から二人はずっと親友だ。

一年前に沙優と仲良くしていたあの時のように二人を大切にしている。
嬉しい時は一緒に喜びを分かち合って、辛い時は笑顔に戻れるよう励ました。
だからこそ良好な関係を壊したくなかった。

二人と一緒にいるのが、楽しくて幸せで心地良いから、ずっとこの関係から離れたくないって思っている。



でも、一年前のあの頃のように人を信じて全てを曝け出す事が出来るのだろうか。
二人に恋の相談をしてもいいのだろうか。
敦士の時のように胸の内を明かしたら気持ちが楽になるのはわかっている。
この二人なら素直に耳を傾けてくれるだろう。

『頑張れ』って、心強く応援してくれるに違いない。


だけど、怖い。
一度トラウマを経験しているから、また同じように裏切られてしまったらと思うと……。



和葉は気持ちを押され気味だが、まるでフラッシュバックしてしまったかのようにトラウマが蘇ってしまうと、あと一歩の勇気が踏み出せない。



冷たい夜風で短い黒髪が揺れる。
口元で溢れる息は、まるで綿菓子のようにほんわりと白く染まった。

しかし、閉ざした口で無反応を保ったままの和葉を見ていた凛は、静かに立って和葉の隣に腰を落とした。

凛は先ほどとは態度を一変させて、和葉の背中を優しくさすり始める。



「私達は親友だから辛いものを全部受け止められる。心の痛みを分かち合える。でも、あんたにはあんたの考えがあると思うんだ。私は言いたい事はもう伝えたから、これ以上無理強いはしないよ。だから、判断はあんたに任せる」

「えっ……」



和葉は意外な返答を受け取って凛を見つめると、穏やかで優しい目を向けていた。
その瞬間、凛が持っていた勇気のバトンは、和葉の手へしっかり渡されていた事に気付いた。

凛の言葉一つ一つが和葉の心の中へ沁みていくと、安心してしまったかのように瞳にジワリと涙が浮かび上がる。