しかし、二人のやりとりを見ているうちに、頭の中のパズルが完成した。
念には念をと思って、完成したパズルが正解かどうかを確認する事に。



「ま、まさか……。もしかして……」



和葉の指先が右左の二人を確認するように交互に指すと、山田は後頭部を掻きむしりながら照れ臭そうに口を開いた。



「やだなぁ〜。一ノ瀬さんって、愛莉ちゃんと知り合いなんっスか?」

「えっ。あっ……、あぁそうだけど」


「実は、愛莉ちゃんが僕の彼女なんです。いやぁ〜、二人が知り合いなんて世の中狭いですね」



山田は目尻を下げて照れ笑いしながらそう言った。
隣の愛莉も幸せそうに微笑んでいる。



「ええっ! マジ?!」



和葉は急展開に声を上げた。



そー言えば、先日山田が彼女とネズミーランドに行ったって言ってた。

愛莉も新しい彼氏とネズミーランドに行ったって言ってたし、日程的にも近かったからもしやとは思っていたけど……。



別々だった二つの記憶が一つに繋がり合うと、和葉は偶然が重なり合った結果にただただ驚くばかり。



「愛莉ちゃん、じゃあそろそろ行こっか。それじゃあ、一ノ瀬さんお疲れーっス」

「和葉さん、また学校でね」

「あ……うん、お疲れ様でした」



山田は早速愛莉の手を取って仲良く寄り添いながら背中を向けた。

ところが、愛莉はふと何かを思い出したように自動ドアの前で足を止めると、和葉へ振り返る。



「そー言えば、拓真達もう別れたみたいだよ。知ってた?」



和葉は衝撃的な事実を耳にすると、まるで一瞬記憶喪失になったかのように頭が真っ白に。



「……えっ、うそ! まさかぁ」

「やっぱりまだ知らなかったかぁ……。あんなにベッタリくっついていた栞がパタリと教室に来なくなったから、どうしたのかなぁと思って拓真に直接聞いたから」


「別れた原因は?」

「さぁ。……でも、二人が別れたって事は和葉さんにもまだチャンスはあるかもね」



最後に頑張れと言わんばかりにニコッと微笑むと、バイバイと手を振って山田とコンビニを出て行った。


愛莉は和葉達が賭けから始まった関係と知るはずもない。
だから、まだチャンスはあると思っている。



嘘でしょ……。
拓真を忘れる事が出来なくて親の反対を押し切って転校までしてきたあの栞がどうして。
『正々堂々と勝負しよう』ってライバル宣言してまで意気込んでいたのに。

二人の間に何があったの?
栞が拓真にフラれたの?
それとも、栞が拓真をフッたの?

どんなに思考を巡らせても二人の考えが読み取れない。



だから、昨日栞は畑に来なかったんだ。
あんなに畑仕事を張り切っていたのに、来ないなんておかしいと思った。


最近、別れたのかな。
昨日のお婆さんは何も知らない様子だったし。
ひょっとしたら、お婆さんは二人が付き合っていた事自体知らなかったのかもしれない。

拓真は一生怪我の責任を償おうとしていたけど、別れた今はどう思ってるんだろう。
少しはトラウマから解放されたのかな。



和葉は昨日の記憶が上書きされてしまうほど別れた原因が気になった。