日曜日の今日は夕方5時からバイト。
電車で通勤後、制服に着替え終えてから店内に入って先にシフトに入っていた山田と交代した。
他の仲間はレジと品出し作業に回っていたので、手が空いていた私はモップを持って店内清掃に取り掛かかった。
出入り口付近は特に集中して汚れているから、腰を入れて入念に作業を行う。
すると、山田は帰り支度を終えて店内に再び戻って来た。
半ニヤケ顔でスマホを打ちながらうろうろとしている。
昨日は拓真に弁解が出来なくて他の従業員とも口を開きたくないほどテンションがダウンしている私とは、まるで天地の差。
しかし、山田はなかなか帰らない。
仕事で何度も見慣れている店内を、落ち着きない様子でスマホ片手に歩き回っていた。
店内清掃に取り掛かっている私にとっては邪魔そのもの。
ってか、考え過ぎかもしれないけど、私の行く手を阻んでるような気がしてならない。
「ねぇ、山田。とっくに上がってるのに、まだ帰らないの?」
目障りだったから思わず本音が漏れた。
すると、山田はアクションを心待ちにしていたかのように、得意げに笑みを浮かべた。
「僕これからデートで彼女がもうすぐ迎えに来るんです。僕の彼女って超かわいいんですよ」
「ふーん」
勿論、山田の彼女に興味はない。
生涯二人目で人生最高潮の幸せを噛みしめているところ申し訳ないが、今は何もかも上手くいってないから面白くない。
すると、それから間もなく店の自動ドアが開いた。
ピロリローン
入店音が鳴り響くと、出入り口にいる和葉は来店客に「いらっしゃいませ」と、挨拶しながら自動ドアに目を向けた。
ところが、来店客の顔を目にした瞬間、思わず目線が止まる。
「あれ、愛莉じゃん! ねぇ、こんなところで会うなんて奇遇じゃない?」
「あ! 和葉さん。もしかして、地元はこの近辺なの?」
「ううん、家はここから1時間40分ほどかかるけど、下校後から働けるように学校の近場で働いてるの」
まさか学校から三駅先の小さな町の駅近のコンビニで、愛莉に遭遇するなんて思いもしなかった。
あまりにも偶然で驚いた二人は会話をしていると、まるで花が開花したかのようなパアッと明るい笑顔になった山田が後から二人の間へ入って来た。
「愛莉ちゃ〜ん! 待ったよ。今日は遅かったね」
「あ、芳くん。お待たせ。ごめ〜ん、洋服を選んでたら遅れちゃった」
「いいのいいの。それより、今日の服も最高に可愛いね。愛莉ちゃんにはとっても似合ってるよ。いつも服のセンスがいいね」
「やっだぁ。芳くんったら! いつも愛莉の事を褒めすぎィ」
愛莉は私が目の前にいるにも拘らず、まるで別人のように山田にノロけ始めた。
そこに小汚い口調の愛莉はいない。
一瞬、我が目を疑った。
まさに猫を被るとはこーゆー事を言う。



