食事も満足にせずに先に畑に出てきてしまった和葉だが、午後の作業内容がわからない。
ちなみに、小松菜の追肥作業はハウス1棟分だったので、午前中で作業はほぼ終了した。
午後は何から手を付けようかな。
とりあえず、手前側にある大根畑に入って、周りの雑草でも抜いていこうかな。
大根は隣の葉とぶつかり合いながらも、狭々と等間隔で整列している。
以前、拓真と一緒に種を蒔いた大根が立派に成長している様子を見て、少しだけ嬉しくなった。
間引きをしていた時は、親指と人差し指で摘めるくらい小さな芽だったのに、今は両手を使わなければ引っこ抜けないほど。
つい最近、種を蒔いたと思っていたのに……。
花が満開の時期を迎えているかのように葉がパアッと開いて大きく垂れているし、土から少し白い頭を覗かせているから、そろそろ収穫期かな。
暫く畑に来ない間に随分大きく成長したんだね。
よし!
午後は真剣に作業に取り組んで、さっさとやる事を終わらせよう。
そうすれば、少しだけでも拓真と話をするチャンスが訪れるかもしれない。
和葉は拓真の不機嫌な姿を見て気分が滅入っていたが、午後からは心機一転して頑張ると決めた。
ーーもう、1月下旬。
お婆さんにジャンパーを借りたとはいえ、身体を動かしていないと寒い。
何も遮るものがない吹きさらしの大地は、冷たい風が直に吹き付けてくる。
昼を境に空は厚い雲に覆われていた。
雲の隙間からは今にも雨か雪が降りそうな勢いに。
お尻が地面に着きそうなほど、小さくしゃがんで雑草を握りしめたまま薄暗くなり始めた空を見上げたら、不思議と拓真との色濃い思い出が蘇ってきた。
全校生徒が集まる校庭に向かって屋上から告白が失敗した直後、拓真は屋上で落胆していた私の元へやって来た。
『イエスの返事は出来ないけど、根性だけは認めてやる。お前に最初で最後のチャンスをやるよ』
『もしかして、私とデートでもしてくれるの?』
『ま、そんな感じ』
その日は何も聞かされぬまま拓真の家に連れて行かれた。
私はデートをしてくれるかと思って期待したけど、その期待は後に悪夢へと誘われた。
『今日中に雑草を抜き終えた上にプラス5回農作業したら、必ずデートしてやる』
『えっ……』
『但し、条件が一つ。毎週土日のどちらかは必ずここに来ると約束しろ』
告白を断られた日の同日、放課後に拓真の家に連れて行かれたまでは良かったけど、デートの条件として農作業を言い渡された。
あまりにも無謀な条件に、最初は冗談じゃないって思った。
青春真っ盛りのギャルの私が、デート如きで何度も畑に入るなるなんてあり得ないと思っていたから。



