「あのさ、話は戻るけど藤田さんの謝罪をいつ伝えようか?」
「その件だけど……。藤田さんには悪いけど、やっぱり今はまだ言えないよ」
「えっ、どうして?」
「だって私達、恋の相談をされていないのに、いきなり藤田さんの話を切り出したらきっと驚くよ」
「確かにね。和葉は私達に知られたくないと思ってるかもしれないから、直接言ってくるまで様子を見ようか」
「藤田さんには申し訳ないけどそうしよう」
心苦しく思うが、栞が拓真の気持ちを優先に考えている事と同じく、自分達も和葉の気持ちを優先したいと思っていた。
ーー翌日のHR後。
手早く荷物を持って和葉の席の横についた凛は、席で身支度をしている和葉にひと声かけた。
「今日は駅前のファミレスでお茶して帰らない? バイトの時間まで少し時間があるでしょ」
凛は、最近放課後になってすぐ何処かに姿を消してしまう和葉がいなくなる前にと思って早々に声をかけた。
昨日、急遽気持ちを知ってから、何か違う形で少しでも元気付けよう思っていた。
和葉の顔は今日も表情が冴えない。
目の下にはクマが出来ているし、ほっそりと痩せこけた頬は血色が悪いまま。
唇にうっすらと乗ったピンクのリップもノリが悪い。
「ごめん、用事があるから先帰るね。じゃあね」
「……ちょっと、和葉!」
和葉はそう言うと、カバンをギュッと強く握りしめて凛からの返事を聞く前に、教室から逃げるように去って行った。
一方、その場に取り残された凛は、去って行く背中を険しい目つきのまま見届ける事に。
すると、祐宇は荷物を持って横に身を寄せて、凛だけに聞こえる声で呟いた。
「和葉は私達の想像以上に心の傷が深いのかも」
「ひょっとしたら、藤田さん達が別れた事も知らないかもね」
「それを私達が伝えたとしても、今の和葉にとって吉報になるとは限らないし」
「さっきは『用事があるから』と言ってたけど、あの子毎日早く帰ってるじゃん。一体、一人で何処に行ってるのかな。敦士くんとはもう仲直りしてるのかな」
「本命は拓真なのに?」
「あ……、そうか。じゃあ、和葉にとって敦士くんはどんな存在だったのかな」
「恋人に近い関係だと思っていたけど、敦士くんは和葉の好きな人が拓真だって知ってたのかな」
「和葉の気持ちに気付いたから離れて行ったとか? 最近、二人は喋ってないから距離が出来たのかも」
「二人の事なんて何も知らないから、そうとしか考えようがないね」
和葉の近くにいても大事な事を伝えてもらえないから、拓真や敦士の事を今どう思っているのかわからない。
そして、今の自分達は何処まで力になれるか想像がつかない。



