LOVE HUNTER



「最近はちゃんと飯を食えるようになったし、体力も回復してきて身体の方は平気そうだったから、今なら大丈夫かなって思った。実はお前の為に栄養たっぷりでカロリー多めで弁当を作ってもらったんだよね」

「えっ……。あのお弁当は敦士の為に作られたものじゃないの?」


「いいや、母親に頼み込んでお前の為に作ってもらったの。うちの親は結構協力的だろ」



この瞬間、私は影の協力者に助けられていた事を知った。
いい意味で騙されたお陰ですっかり体調が良くなった。

私はこうやって自分の知らないところで人の温かみに触れている。



和葉は思わず感極まると涙が止まらなくなって手で顔を覆った。



「嘘……。全然気付かなかった」

「嘘じゃないよ。体力は回復したし、この先しっかり自分の人生を歩んでいかなきゃいけないから、俺の手助けはここでお終い。まぁ、告白が上手くいったらラッキーかなって思っていただけだから、そんなに深く考えないで」


「でも、敦士の心が傷付いてる」

「失恋話を聞かされた時から、俺の恋はとっくに失恋してたよ」


「じゃあ、もう友達でいてくれなくなっちゃうの?」

「うん。この先どうするかは自分で考えて。選択を間違わないように、後悔しないように正しい道に向かって進めばいいんじゃない? きっと、その先に答えは待ってるから」



敦士は私の気持ちを見透かしていた。
それなのに私の体調が心配で、自分の気持ちを押さえ込んでまで傍にいてくれた。

それは、どんなに辛い日々だったんだろう。


私は敦士に拓真への想いを吐き出していたのに、敦士の想いは何処へ吐き出されていたんだろうと思ったら苦しくて息が詰まった。



「じゃあな、頑張れよ!」



敦士は最後に和葉の頭をぐしゃぐしゃしてから音楽室を後にした。
その場に取り残された和葉は一人で身体を震わせながら泣いた。



敦士は、音楽室から階段へと向かい、一歩一歩足を踏みしめて屋上に出ると、右手で顔を押さえて後ろに倒れ込むかのように扉横の壁にドカッともたれかかった。

失恋のショックを受けたと同時に、想像以上の精神的ダメージを負っていた。



和葉が隣にいる毎日はとても楽しくて幸せだった。
小さな事にムキになったり、冗談を言ったら呆れた顔して笑ってくれたり、やけに素直な一面を見せてくれたりして……。

今日から和葉が美味しそうにお弁当を食べる姿や、一緒に笑い合える日が来なくなると思うと、想像するだけで胸が握りつぶされてしまいそうなほど苦しい。



「やべぇ。最初はこんなつもりで近付いた訳じゃなかったのに……」



このままやっていける自信がなかったから別れを告げた。

きっと、これでいい。
自分的にはやり切ったし、アイツの心の中に俺が入り込むスペースが残されていなかったから諦めざるを得なかった。
だから、もうこれ以上気持ちをかき乱す事を辞めた。

俺は久々のマジ恋愛に、長く苦しめられそうな予感がする。