祐宇と凛は賭けを提案した二週間前から今日まで、拓真の報告を受けていない。
二人が恋に発展していないという現実をいま反応で知ったばかり。
凛は和葉にエンジンをかけてあげれば再びチャンスが訪れるかもしれないと思って提案する。
「そっか、二万円じゃ足りなかったか。……じゃあ、三万円ならどう?」
凛は紙パックコーヒーのストローを口に加えたまま値上げ宣言をして、和葉の心を刺激する。
和葉は三万円という金額が耳に入った瞬間、再びガバッと顔を見上げた。
それは、千円や二千円どころのちっぽけな値上げじゃない。
時給に換算すると約10時間分に値する。
追加で服やバッグやアクセサリーだって買える。
和葉は相場が高騰した事により、思わず息をゴクリと飲んだ。
和葉「さ……三万円。賭け金の二万円から更に一万円上乗せした、あの三万円?」
凛「……そ、三万円。一万円札三枚。それでどう? 手を打たない?」
祐宇「凛〜。いくらなんでも、それはさすがに上乗せしすぎじゃない?」
凛「ツンデレくんはその辺の男とレベルが違うもん。これくらいが相場じゃない?」
祐宇「でも、メガネくんを落とすのに三万円って、高額過ぎじゃね?」
冷や汗を滲ませてリアルに黙り込む和葉の横で、二人の議論は繰り広げられる。
だが、三万円で頭がいっぱいの和葉の耳には、二人の会話は入って来ない。
もし、三万円あったら……。
洋服……美容……ううん、ダメダメ。
拓真と上手くいったとしても、三万円はさすがに高額過ぎて受け取れない。
たった一人の男を落とすだけで三万円がポンと支払われてしまうなんて、さすがの私でも良心が痛むよ。
俯きざまに金額と葛藤してる和葉は、まるで念仏を唱えているかのようにブツブツとひとり言を漏らしていた。



