告白されてから返事を待たせっきりだったけど、まさかこんな早く決断を迫ってくるとは思わなかった。
心の傷が癒えてないのは一番よく知ってるはずだし、祐宇や凛よりも私の事を理解してるはず。

しかも、常に心の状態を曝け出してたし、敦士からも現況を伺ってくる事もあった。



『少しは元気になった?』とか。
『弁当は残すなよ』とか。
『悩むくらいなら俺に相談しろ』とか。



親身になって話を聞いてくれるから、私はいつもその優しさに甘えていた。
告白の返事は私の気持ちが落ち着くまで待ってくれると思っていたのに、まさかこのタイミングなんて……。


でも、きっと昨日今日で決めた訳じゃない。
王手を出す準備は着々と進められていたはず。


それなのに、私はずっと親友として接していたし、失恋したてで自分の事で手一杯になっていたから、いつしか敦士の想いをスルーしていた。

冷静に思い返してみたら、無意識に残酷な日々を送らせていたのかもしれない。



「本気でお前が好きだから絶対泣かせないし、誰にも負けないくらい幸せにしてやる自信がある」

「敦士……」


「一つ言っておくけど、中途半端な決断じゃないよ。……俺、マジだから」



顔を横に向けて敦士の目を見たら、更に本気度が伝わってきた。
以前、男版和葉と呼ばれていたように、敦士は気持ちをはっきり明確に伝えてくる。
その姿は、拓真と出会った頃の自分の姿と重なって見えた。

だから、余計どう返答したらいいかわからない。



「ごめん。……まだ、ちょっと考えられなくて」



本音を言えば手放したくない。
勿論友達として。
だから、この話が少しでも先延ばしになればいいと思って言葉を濁した。



「答えはイエスかノーのうちの一つだけでいい。返事次第でケジメをつけるから正直な答えを聞かせて」

「そんな……。心の準備が整ってないのに返事を聞かれても決められないよ」


「どうして?」

「『どうして?』って……。まだ考えられる段階じゃなくて」



和葉が言葉を濁す度に微妙な空気が流れていく。
ドクンドクンと、身体が揺れ動きそうなほど荒れ狂う胸の鼓動。
次に口を開くのが怖くて頭から血の気が引いていく。



こんな大きな決断をしなきゃいけないのに、考える時間は与えられない。
敦士からしたら、考える時間は十分与えたつもりだったのかな。

どうしよう……。
なんて返事をしたら納得してくれるかな。
どう言ったら、関係を維持してくれるのかな。



「辛い思い出も苦しい時間も幸せオーラで包み込んであげる。……だから、俺を信じてついてきて欲しい」



敦士はそう言うと、返事を聞かぬまま髪の隙間に手ぐしのように指を絡ませてからキスをしようとして顔を引き寄せた。