LOVE HUNTER




和葉は敦士に本音を伝えたあの日から、重石のようにのしかかっていた肩の荷が少しずつ下りていった。



一年前のトラウマを抱えたあの日以来、人に悩みを吐き出したら少し楽になった。
やっぱり、私は誰かに寄りかからないとダメかもしれない。

もし、失恋の山を一人で乗り越えなければならなかったら、心の準備も装備も不十分だから無理だったと思う。


拓真との恋は辛い日も沢山あったけど、幸せな日も沢山あった。
だから、この恋に悔いはない。




拓真から完全に離れる生活を送り始めてから、三週間が経った。
街はイルミネーションに彩られて、クリスマスムード一色の12月の中旬を迎えた。


芯から強くなるにはまだ時間がかかりそうだけど、その間支え続けてくれた敦士とは次第に距離が縮まっていった。
男を追い求めていた時間は、再び男に追い求められる時間に。
昔のスタイルに戻っただけだから、やけにしっくりとくる。



敦士は優しい。
笑顔を生み出す為に意地悪を言ったりするけれど、嫌な気持ちにさせない。
誰かさんみたいに気持ちを無視したり、頭ごなしに怒鳴りつけたり、無理強いなんてしないし。

歴代の彼氏のように女王様気分にさせてくれるし、大事に想ってくれる。


いっその事、勢いに乗って付き合っちゃおうかな。

未だに気持ちに整理が出来ないけど、敦士に寄りかからせてもらえば1日でも早く失恋の傷が癒えるかもしれない。



和葉は校内で拓真と顔を合わす機会がグッと減って、気持ちが楽な方へ誘われるかのように心が揺らぎ始めていた。




しかし、対照的な考えを持つ拓真は、ヤキモキした日々を送っていた。

校内で和葉と敦士が仲良さそうに歩いている姿を何度も目撃していた。
その度に目線が吸い込まれるように二人の方へ。

それは、一人でも栞が隣に居る時でも関係ない。
意識していなくても人混みの中から探すのは簡単だった。

本音を言うなら、栞との交際を機に毎週農作業を手伝ってくれた和葉と急に他人になってしまうのは正解ではないと思っていた。



拓真は煮え切らない日々を過ごしていたが、彼女としてスタートさせたばかりの栞は少しずつ異変に気付いていた。
まるでキャンドルの炎が燃え尽きそうなくらい、笑顔もうっすら消えつつある。


幸せ絶頂期のはずが、拓真の瞳からは情熱的なものを感じさせられない。

席に座っている時は大概窓の外を眺めている。
そして、授業後の休み時間の終わり際には、決まったように廊下を見つめている。
一緒になって目線を向けても、そこに何かがある訳でもない。



「今日も敦士の超豪華弁当が食べたいよ〜。ねぇねぇ、和葉のおにぎりと交換して!」

「また? 毎日それ言ってんじゃん」


「成長期だから栄養が不足してるの」

「高二にもなってまだ成長期かよ。あぁ〜あ、確かにチビだもんな。もう成長が止まったなんて認めたくない気持ちはわかる」


「どの口がチビだって言ってるのよ!」

「お嬢様、少々お言葉が汚いでございます」


「あのさぁ、敦士は私の執事じゃないんだから変な冗談はやめてくんない?」



ーーそれは、敦士の彼女のように過ごす生活にもすっかり慣れた、ある日の出来事だった。