「まぁ、あんたみたいな一年坊主のガキには、お友達の魅力なんてわかる訳ないか」
「……っ!」
敦士は和葉が痩せ細って衰弱してしまうほど傷つけた罰として灸を据えた。
半分意地悪だが、半分は本気、
その為に短い時間を使って、わざわざ別棟の校舎まで会いにきた。
拓真は敦士の言動にカチンときて勢いよく振り返った。
感情任せで口を開こうとしたが、今の自分には言い返す言葉がない。
「俺には関係ないし……」
拓真は語尾を消していき、素っ気なく背中を向けて教室へ入って行った。
席に着いてからも、挑発的な言動が気に障っていたせいで、イライラした様子で拳を力強く握りしめる。
「……ふーん。なるほど」
敦士は反応を観察した後、ポツリとひとり言を言って教室に帰って行った。
拓真は唇を噛み締めながら頬杖をついて窓の外を眺めていると、教室に入ってきた栞は傍へ駆け寄って行き、心配そうな眼差しで顔を覗き込んだ。
「拓真、……機嫌悪いの?」
「えっ……」
「さっきまでは普通だったのに、今は怖い顔をしてる」
「そうかな」
「うん……。本当は今朝から調子悪いね。話をしていても無口な時間が多かったから、どうしたのかなって」
「ごめん、気付かなかった」
「ううん、いいの。私がちょっと欲張りになっているだけかも。だから、謝らないで」
栞はそう言うと、遠慮がちに手を振った。
一旦表情を緩めた拓真だが、心の中は穏やかとはかけ離れている。
俺、一体どうしたんだろう。
確かにあの男に会ってから嫌な気持ちにはなったけど、どうしてこんなに引きずるんだろう。
しかも、アイツはどんな目論見があって和葉の話を?
宣戦布告?
いや、まさか。
アイツは俺がフリーだと思って勝手にライバル視しているだけ。
だから、気に食わなくて食ってかかってきたんだろう。
でも、アイツの事なんて放っておけばいいのに。
栞の事だけ考えてればいいのに。
何故か今は別の事を考えている……。
拓真は登校中に目が合った和葉に目線を逸らされてモヤモヤ感が残っていたが、無意識のうちに見つめていた事は記憶の中に埋もれていた。
指摘されるほど最も嫌な記憶として根強く残っていたのは、敦士とのやりとり。
敦士の出現によって記憶が塗り重ねられてしまったせいか、イライラの根本的な原因には辿り着けない。



