「スゴイ! 色とりどりで美味しそう……」
「俺んち、小さな料亭を営んでるの。前にも言わなかったっけ?」
「ううん、初耳」
「なら、外食気分を味わって」
料亭の味と知ってお弁当の中身に目線が釘付けられてしまった和葉は、思わず感銘を受けた。
敦士はこんな贅沢な料理を毎日食べれて羨ましいなぁ。
だから、こんなに身長が伸びたんだ。
和葉はお弁当箱の美味しそうな香りが鼻に漂うと、真顔でゴクリと唾を飲む。
「ほら、眺めてないでさっさと食えよ。口に入れないと味がわからないし、身体に栄養が回らないから」
敦士は過保護な一面を覗かせながら、お弁当袋から箸を取り出して、卵焼きを突いて和葉の口元に近づけた。
「ほら、あーん」
「小さな子じゃないんだし、食べさせてもらわなくても一人で食べれるから」
和葉は可愛げもなく敦士から箸ごと奪って、一口で卵焼きを口に頬張った。
パクリ……
「……ウマっ! こんなに旨い卵焼きを、今まで一度も食べた事がない」
「そう? じゃあ、お礼にお前の手作り弁当食わして……、なぁんて」
「えへへ。実は料理にはちょっと自信があるんだ」
「うっそ、マジか! そりゃ弁当が食える日が楽しみで仕方ない」
料理の腕前など知らない敦士は、和葉にお弁当を作ってもらえるかと思い、テンションがピークを迎えた。
しかし、和葉の作る料理がセンス無しの激マズ料理だとも知らずに……。
「……で、何か悩んでんの?」
敦士は早々と一つ目のパンを口に放り終えて二つ目のパンの袋を開くと同時に、話を本筋に切り替えた。
「あ、うん……」
「聞いたる」
敦士はコブ取り爺さんのように、頬を片方プクッと膨らませながらパンを食べている。
敦士はいつも救世主。
私が落ち込んでるタイミングに現れて、正義の味方のように心を救出してくれる。
これが恋じゃないとわかっていても、一人で悩みを抱えて苦しんでいたから、敦士の優しさに寄りかかってしまいたくなる時がある。
過去のトラウマが邪魔をして友達に相談出来ない私。
だけど、不思議。
何故か包み隠さずに語る事が出来た。
敦士も相槌を打ちながら話を聞いてくれたし、拓真との出会いから別れの全てを話したら少し胸が楽になった。
でも、想いを寄せている人からライバルの話なんて聞きたくないはずだよね。



