……もう、これでいい。
拓真が栞を選んだ瞬間から、私達は別々の道を歩み始めた。
隣から優しく微笑んでくれた笑顔も。
憎たらしく向けて来た意地悪な顔も。
『バカだな』と言って呆れた顔も。
ストーカー男から守り抜いてくれ勇敢な顔も。
怪我をした時に見せてくれた心配した顔も。
敦士にヤキモチを妬いたような顔も。
もう、二度と見る事が出来ない。
辛過ぎるし諦めたくないよ。
だけど、これ以上何かを求めても無意味。
和葉はストレスによって教室に入った途端に吐き気が催してしまい、机にカバンを置いてから急いでトイレに駆け込んだ。
胃の中の物を全て吐き出すが、我慢していた気持ちが溢れ返ってしまい、その場で声を抑えながら咽び泣いた。
「うぅっ……っあ、……うぅっ……」
精神的に不安定だった。
もう、ここが限界だなとしみじみ痛感するくらいに……。
祐宇達は、教室に到着してから口元に両手を押さえてトイレに駆け込んだ和葉をとても心配していた。
和葉は血色が悪いまま教室に戻ると、祐宇と凛は和葉を保健室に連れて行き、暫く休ませる事に。
保健室のベッドに横になってから、一旦頭を空っぽにしようと思って、布団に入りながらボンヤリと天井を見つめた。
もう……、私は一人ぼっちなのかな。
楽しかった日々は二度と戻って来ないのかな。
拓真を忘れなきゃいけないと思う傍で、思い描かれるのは幸せな思い出ばかり。
消そうと思ってもなかなか消えていかない現実に胸が締め付けられていく。
ひっそりと静まり返る保健室内のベッドに横になっている和葉は、涙によって天井が歪んでいった。
和葉は3時間目が始まる前に教室へ戻った。
ベッドで泣いたらスッキリした。
横になってる間、吐き気もすっかり治った。
失恋のショックで体調を崩すなんて、これから先が思いやられる。
二年生だから、卒業まではあと1年4ヶ月弱。
しかも、拓真達は先週の金曜日から付き合い始めたばかり。
今朝みたいに二人を見かける度に、同じように苦しいひと時を過ごし続けていくのかな。
それとも、時が失恋の傷を癒してくれるのだろうか……。



