拓真は生意気な態度でしきりに楯突いてくる和葉に耐えられる自信がなくなった。
和葉はモグラ叩きゲームのモグラのように、ハンマーで叩いても叩いても別の穴から出現するような厄介な存在だから。
高校に入学してから穏やかで静かな日々を過ごしていた。
読書をしている時は、唯一心が落ち着く時間。
日常の嫌な事を忘れさせてくれる至福のひと時だった。
それなのに、ある日を境に金髪のバカなギャルに平穏な日常を支配されてしまった。
朝、学校の敷地内に足を踏み入れた瞬間から、彼女によるストーカー行為が始まり……。
読書をする時間。
トイレに行く合間の些細な時間。
移動教室の合間の時間。
友達と話し始めたほんの僅かな時間。
日直で職員室に出向いた2分程度の時間。
ここ二週間はウンザリするほど付きまとわれて精神的にも苦痛だった上に、自分は清楚だと当然の如く言いきるノーテンキおバカさんにもう打つ手がなかった。
拓真はガクンと頭を下ろしたまま小さな声で呟いた。
「……こんなバカ、今まで見た事がない」
「え……」
「自分で気付いていないの?」
「何が?」
首を傾げてケロッと聞き返す和葉に腸が煮えくり返る。
「拓ちゃんはやめろ! 二度と口にするな! しかも、あんたが清楚系でも何でも興味がない。何度言わせれば気が済むんだ。俺の行く所にいちいちついて来るな! お前と俺の距離は3メートル以上だ! それ以上近付くな!」
「そんなぁ。拓真とデートをする為に毎日ここまで頑張ってるんだから、距離は1メートル以内にオマケしてよぉ」
「するかっっ、アホ! いいな、これ以上俺に迷惑かけるな。もう二度と後をつけるな!」
拓真から怒りのシャワーを浴びると、和葉はキーンと耳鳴りがした。
拓真は感情を露わにして怒鳴り散らした後、背中を向けて不機嫌な足音を立てながら階段を駆け下りて行く。
階段に取り残された和葉はショボくれて肩を落とした。
今までは口を利いてもらえなかったから彼がどういった人物かはわからなかったけど……。
こんな風に感情を爆発させたりするんだ。
さすがに驚いたよ。
嫌気に満ちた瞳は、槍に相当するくらい鋭くて痛く感じた。
でも、何でそんなに怒るのかな。
女の子が勇気を出してアピールしてるのに。
毎日無視され続けて寂しくてもめげずに頑張っていたのに。



