LOVE HUNTER




拓真家の居間で、拓真とおばあさんと私の三人で囲む食卓。

先週は気分が沈んでいてここに向かう気がせずに無断で農作業を休んだから、三人での食事風景が久しぶりに思えた。

だけど、以前のように口を開けない。



一人で場違いな夜遊びの格好のまま若草色の座布団の上に正座。
農作業に来ていた時とは違って居心地が悪い。

でも、今日が土曜日で本当に良かった……。



昨日は拓真にフラれてしまったけど、翌日の今は一緒に食卓を囲んでいる。
自分でも呆れてどうしよもない。



「せっかく来たんだし、この後農作業して行く?」

「あっ……、うん」



拓真は小鉢に入っているおかずを箸で突っつきながら、『ちょっと家に寄ってく?』くらいの勢いで農作業を勧めてきた。
でも、さすがの私だってもう農作業をする意味がない事くらいわかっている。

しかし、昨晩は深夜に散々迷惑をかけたので、選択肢は一つしかなかった。



「今日、栞ちゃんは何時に来るの?」



ずばり、いま一番気になっている事を聞いた。
昨日は告白現場を目撃した事もあって、栞とは顔を合わせたくない。
気持ちの整理がついていないのに、誇らしげな顔なんて見たくないから。



「あいつ、いま実家に帰ってるから今日は来ないよ」



あいつ……か。
栞はもうあいつ呼ばれされる存在なんだ。
昨日から彼女になったもんね。

栞が今日来ないのは嬉しいけど、拓真の口からあいつなんて聞きたくなかった。



マグマのように煮え立つ嫉妬心は、心の中に留めておく事しか出来ない。
昨日と今日と、拓真と顔を合わせる度に関係に亀裂が入っていくような気がしてならない。



ーーすると突然、食事を進めている和葉に、何処からか女性の声が耳に入ってきた。



『和葉……。あんたさぁ、LOVE HUNTERなんでしょ』

……誰?



ふと反応して振り返ったり辺りを見回してみたけど、部屋には拓真とお婆さん以外誰もいない。
しかも、女性の声がはっきり聞こえていたのに、無言で食事を進めている二人には何も聞こえていない様子。



あれ……。
いま確かに女性の声がしたはずなんだけど。



和葉は何の変哲もない様子から空耳と判断して、首を傾げながら再び箸を進める。



『そんなに拓真が欲しいなら奪っちゃいなよ』

だから、あんたは誰かって聞いてるの!



和葉は空耳じゃない事に気付くと、心の声を大にして出どころのわからない声に怒鳴りつけた。



『ふふっ、……私? 私は昔の和葉。人の彼氏を奪う事なんて昔は当たり前のように小汚くやってたじゃない』

……っ!


『今さら純粋ぶってんじゃないよ。拓真が好きなら栞から奪っちゃいなって』

ダメだよ。
拓真を奪えと言われても、今の自分には人の彼氏を奪う事なんて出来ない。


拓真は昔から栞が好きだったんだよ。
栞もそう。
自分の身体が犠牲になっても、加害者の拓真を許して暴走族から更生させてくれたんだよ。

それに、手に入れようと思っても、なかなか手に入らないものだってある。
人の気持ちは、決して自分の思い通りにはならないんだよ。