ーー翌日の朝の土曜日。
ブーッ…… ブーッ…… ブーッ……
しきりに固い感触がしていた左胸に、突然感じた事のない小刻みな振動が湧き起こった。
「ひゃあっ!!」
一瞬何が起きたかわからなくて、気が狂ったように布団から飛び起きて悲鳴を漏らした。
しかし、目覚めた瞬間……。
「あれ、ここは……」
軽く見渡しても自分の部屋ではない。
頭が回転を始めたばかりだから、拓真の部屋という事に気付かなかった。
振動の元に目線を滑らせると珍事が起きていた。
何故かブラジャーの中に差し込まれているスマートフォン。
しかも、バイブの振動が何度もしつこく身体中に響き渡ってくる。
とりあえずブラジャーからスマホを取り出して、電話に出る事に。
着信元は父親。
すかさず通話ボタンを押して耳に当てた。
『和葉ちゃん、今どこにいるの? 昨晩は帰って来なかったけど、身体は無事なの?』
スマホのスピーカーから届く父親の声は、音が漏れるほど心配している。
しかし、そこでようやく頭が働き出した。
え……。
昨晩は家に帰ってない?
昨日、誰かと一緒に出かけたっけ。
酒で記憶がふっ飛んでしまった和葉は、昨晩の事が思い出せない。
「あっ……、えーっと……えーっと。ここは……、友達の家! 昨日は友達の家に泊まったの」
頭が真っ白の状態で言い訳のような不自然な返事をした。
まるで浮気の弁解をしているかのように……。
しかし、口を動かしている間に頭がはっきりしてくると、ようやく拓真の部屋という事に気付いた。
『はぁ……、良かった。昨晩帰って来なかったから何かあったんじゃないかって心配したよ』
「……あ、うん。心配かけてごめんなさい。また後で電話するから一旦電話を切るね」
ブラジャーの中に差し込まれていたスマホに。
拓真の部屋のベッドの中。
そして、昨晩の記憶がない自分。
沸騰するように次々と疑問が湧き起こってくると、会話を続けられる状態ではなくなって、一旦電話を切って頭の中を整理する事に。
「どうして拓真の家に……」
徐々に意識がはっきりしてくると、冷静ではいられなくなった。



