LOVE HUNTER




和葉は友達と楽しく飲んでいたお酒が予想以上に進み、気分が良くなった上に気が大きくなっていた。



「うわっ! お前めっちゃ酒くせぇ。相当な量の酒を飲んだだろ」

「酒になんて酔ってないっつーの。シラフだっつーの。これがあ・た・し!」



拓真は鼻をつまんで嫌がるが、和葉は髪を乱れさせながら酔っ払いのお決まり文句を言う。
失恋してから失うものや怖いものがなくなってしまったせいか、暴走が止まらない。



「真っ直ぐに立てないシラフなんているかよ」

「ちゃんと立ててるってばぁ! これがぁ〜まっすぐぅ〜。ピーーーン!」


「……嘘をつくな。誰がどう見ても酔っ払いだろ。ほんっと、お前は酒に酔っ払ったまま農作業をしに来た初日といい、こんな真夜中に騒ぎを起こした今といい、相変わらず酒癖が悪いな」

「うふっ、参ったなぁ……。ねぇ、そんなに和葉が気になるのぉ? 拓真ったらいま和葉の事しか頭にないでしょ」


「……はぁ」



酔っ払いの戯言(たわごと)が始まってから、会話のキャッチボールさえままならない。
手の施しようがない状態で諦めかかった拓真の口からは、もはやため息しか出てこない。



「この田舎街は街灯が無さすぎぃ。ひょっとして、月夜が街灯代わりなの? 歩道が見えないし、夜空が綺麗に見え過ぎてウケるんだけどぉ……」

「だからバックライトで足元を照らしてるの? ……ってか、その前に大事な事を忘れてない?」


「へっ、大事な事って?」

「家族に『遅くなる』と連絡を入れたの? しかも、もう既に終電がないんじゃ……。これからどうやって家に帰るつもりだよ」



拓真は話の途中で和葉の家の最寄り駅まで送った事を思い出した。

だが、和葉は今や意識が別のところに向けられていて、聞いてるか聞いてないかわからないくらい身体をふらつかせながらケタケタと笑っている。



「あははー。これからどうやって帰ろうかなぁ。電車がないなら……やっぱり徒歩かなぁ」

「危機感が無さすぎる……」



拓真はバカみたいに心配している自分とは対照的な様子を見た途端、腹立たしく思った。
一刻でも早く酔いが覚めて欲しいと切実に願っている。



「あー、家に電話かぁ。あははっ……、さっきまでここが自分ちだと思っていたからぁ、電話するの忘れちゃったぁ〜。和葉が帰らなかったら家族が心配してくれるかなぁ」

「するに決まってるだろ。手元が怪しいから代わりにお前んちの電話番号を検索してやる。スマホを渡せ」


「嫌〜っ。スマホを取り上げられちゃったら、拓真と愛莉の会話についていけなくなっちゃうぅ〜」

「(酔っ払ってるせいか記憶が前後してるな……)いいからそのスマホをよこせ!」



拓真は手の施しようがない状態に頭を抱えつつも、右手を向けて指先をクイクイと引き寄せて催促した。

しかし、和葉は小さな子供みたいにイヤイヤと首を横に振って(かたく)なに拒んでいる。



「やだもんね〜。あ、そうだ! スマホをブラジャーの中にしまっちゃおっと! ふふっ……。簡単に取り出せないようにワイヤー部分まで深く沈めておこう。そうすれば、一晩だけの恋が叶うかもしれない。んふふふっ」

「……(こいつ……。シラフでも酔っ払ってても最低だな)」



和葉は目の前で堂々と服を引っ張って、スマホをブラジャーの中にギュウギュウと押し込んだ。
不敵な笑みを浮かべてすっかり悪魔に変貌してしまった和葉の心の声は、残念な事にダダ漏れだ。