拓真の教室に定期的に姿を現わすようになった和葉は、すっかりこのクラスの常連者に。
上履きの学年カラー色が違う和葉が教室に入り浸っても、誰も何も驚かない。
拓真が教室に居れば目の色を変えて近付き。
不在時は追跡する為に、まるで探偵のように他の生徒に聞き取り調査。
きっとこのクラスの生徒達には、自分は拓真の追っかけ的存在なんじゃないかと思われているに違いない。
まだ口すら利いてもらえず苦味を噛み締めながらも、毎日健気にアピールを続けているから一途と言えば一途かもしれない。
だが、強いて言うならお金に一途。
好きなのはメガネくんじゃない。
まだまだ二万円をゲットする前段階であり、先にメガネくんの心をゲットしなければならないだけ。
しかし、それが超最難関だから苦戦を強いられている。
ところが、メガネくんを追いかけているうちに、意中の異性の心を射止めるのには労力が必要だと知った。
毎日顔を合わせていても平行線な勝負が続くが故に、お互いのストレスは溜まっていく一方。
つい二週間前まで赤の他人同士だったが、 日常的に隣で過ごした和葉は拓真の顔のほくろの位置まで覚えるようになり、拓真は和葉が10メートル先にいても声に反応するように。
ーーしかし、そんなある日。
事態は急展開を迎える事に。
「拓真ぁ、お願い。和葉と一度だけでもいいからデートしてよぉ。こんなに毎日必死にお願いしてるでしょ。……ね、1時間でいいから」
人通りの少ない学校階段で無視をし続ける拓真の腕を後ろからグイグイ引いた和葉は、いつも通りデートの約束にこぎつくようにお願いしていた。
すると、突然拓真は歯をむき出しにして鬼の形相を向ける。
「もういい加減にしろ!」
ワナワナと身を震わせながら和葉の手を乱雑に振りほどくと、ギロッと睨みつけた。
二週間前に下駄箱で『俺たち、一度会った事ありましたっけ?』と、衝撃的に冷たくあしらわれてしまったあの日から、拓真は初めて口を開いた。
和葉は反応があったことに驚いて目を見開く。
今まではどんなに苦労しても一人相撲だったが、反応があったこの瞬間は二週間努力を重ねた成果とも言える。



