LOVE HUNTER




敦士と二人きりでゲーセンに行ったあの日以来、敦士に対してのハードルが下がった。
その理由は、宙で彷徨っている心境を一番に理解して寛大な心で受け止めてくれるから。


拓真と距離を置いている今の自分には、受け止めてくれる人を必要だった。
友達にも拓真の相談をする事が出来なくて一人じゃ苦しいから、誰かが傍にいて欲しいと思っている。



今まで男に甘えて生きてきた分、自分から男に食らいつくよりも、男に食らいついてもらった方が自分らしくて楽に感じる。
敦士への想いが恋じゃないのはわかってるけど、今は敦士の隣が妙に居心地良い。

出会った当初はグイグイ来てしつこいな〜って思っていたけど、時を重ねていくうちに楽しい時間へと変わっていった。


敦士と遊んでいる時だけは、苦しい時間から解放される。
だから、少しだけ寄りかかってみようと思って学校でも一緒に過ごす時間が増えた。

ひょっとしたら、寂しさを紛らわす為に尻尾を巻いて逃げているだけなのかもしれない。




ーー落ち葉を踏みしめる時期の、ある日の夕方。
学校帰りに敦士に誘われて、バンドの練習を見に行く事に。


敦士は駅のロッカーに預けていたギターを取り出してから二人で電車に乗って、制服のまま一緒に貸しスタジオに向かった。

メンバーが予約した貸しスタジオは、二階建ての建物の地下にある。
ちなみに、一階と二階は楽器屋だ。


一階から地下に向かう右サイドの古びた階段を降りていくと、狭い両サイドの壁にはライブ予定のポスターが乱雑に貼ってある。

貸しスタジオに足を踏み入れるのは、今回が初めて。
だから、ちょっと緊張する。



和葉は入り口の扉の奥の全く見慣れない景色に、軽く目を泳がせた。



まず最初に目に入ったのは、黒壁で薄暗いフロアの受付にいる金髪のロン毛のお兄さん。
黒いロックTに黒マスクをして細目の強面だけど愛想は悪くない。
年齢は20台半ばくらいかと思われる。


受付の右側にはドリンクの自販機が二つ並び、左側のラックには音楽系の雑誌が販売されている。

受付の手前側は待合室兼用なのか、テーブルが3つ並んでおり、そのうちの一つは四人組が座っていた。


そう……。
そこにいる四人組が、今日敦士と一緒に練習する予定のバンドメンバーだ。



「ちーっす。彼女は今日見学に来てくれたダチの和葉。すっげぇかわいいだろ?」



敦士は興奮気味な様子でバンドメンバーに和葉を紹介した。
和葉は人見知りではないが、先日ステージ上で見たばかりのメンバーを間近で見ると高揚感に浸った。



「あ、どうも。敦士のお友達さん、初めまして」



初対面で照れ臭さを隠しながらも、メンバーの前でペコリと行儀よく頭を下げた。

メンバー全員はみな私服姿。
制服姿なのは敦士と和葉だけ。

彼らは先日のステージでキメていた衣装とは違い、私服はパーカーやウィンドブレーカーといったラフな格好をしている。



「へぇ〜、名前は和葉ちゃんって言うんだ」

「コイツ、ぶちゃけいつも君の話ばかり。和葉がかわいいってのろけてばっかで正直ウザいんだけど」

「お〜い〜、その話やめろ〜」



そう言って、戯れあってるメンバー同士はとても仲が良さそう。
だけど、自分がメンバー内で有名人だった事を初めて知った。



「嘘ついてないし! ……ってか、和葉ちゃんに熱上げすぎ」

「黙れ。…っざけんな!」


「和葉ちゃんってさ、読モ系? スタイルいいし、超かわいい。敦士なんてやめて俺はどう?」

「お前なんて無理無理! 高嶺の花過ぎ」


「お前、夏夜ちゃんどうしたの?」

「もう、終わったー」

「お前さぁ、女のサイクル早くね?」



敦士は学校の友達と喋っているイメージしかなかったけど、メンバー内の飛び交う会話によって普段の様子が伺えた。