和葉はまるで胸にトゲが刺さっているような痛くて辛い日々から解放されたくなり、拓真から一旦距離を置く事にした。
今は心の傷を癒す時間を必要としている。
幸い、二人とはクラスも学年も違う。
だから、登校しても教室から一歩も出なければ会う事はない。
ーーだが、そんなある日の放課後。
「ねぇ、今日暇?」
「どうして?」
「俺と一緒に遊ぼ!」
最近、のんびり帰宅するようになった和葉は、教室まで迎えに来た敦士に誘われた。
敦士は毎時間机にうずくまっている和葉を少しでも元気づけようと思っていた。
「うん、いいよ。バイトもないし。……で、何処に行くの?」
「隣町のゲーセンはどう?」
拓真を本気で好きになってから、拓真以外の男と二人きりで遊ぶ事を封印していた。
でも、関係は右肩下がりでこれから先は上手く行く兆しがない。
一途に想っている気持ちに変わりないけど、一度気分転換が必要だと思っている。
だから、イエスの返事をした。
別にこれがデートとは思っていない。
友達として一緒に遊ぶだけ。
でも、10日前までなら間違いなく断っていただろう。
敦士と二人で隣町まで電車で移動して、駅近の有名なゲームセンターに入った。
私が数ヶ月前までアルバイトをしていたゲーセンは小規模のもので、小さいお子様向けのゲーム系が多かったけど、ここは少し年齢層が高い。
一階と二階のツーフロアに分けられていて、一階にはUFOキャッチャーやクレーンゲームやカードゲームやカーレース系のフロアで、二階はメダルゲーム専用フロアだった。
入店した時は気分が落ちていたけど、次第に励まそうとしてくれている敦士の気持ちが伝わって一緒に遊んでいるうちに、いつしか声を張り上げて笑っていた。
遊びに連れ出してくれた敦士のお陰で、すっかり忘れがちだった楽しいという感覚を少しだけ取り戻せた。
次第に時間を忘れるくらいゲームに夢中に……。
一階のフロアで遊び尽くすと、次は二階に上がってメダルフロアへ。
敦士が大量に持ってきたメダルのカップをビンゴゲームの席の台に置いて、狭狭とした一つのシートに二人で座ってメダルを投入した。
すると、ゲームを始めてから2〜3分くらいが経って中央のスロット画面に釘付けになってた頃、敦士はメダルを投入口に入れながら口を開いた。
「お前さぁ。最近辛い事あったんでしょ」
「どうしてわかったの?」
「顔に書いてあるから。愚痴をこぼしていいよ。辛い事を全部受け止めるから」
その瞬間、敦士が悩みを聞き出す為に、ゲーセンに連れ出してくれた事を知った。



