農作業はデートの交換条件だった。
でも、最終的に叶わなかった。
拓真は週末に畑仕事がある限り、のんびりデートなんてしていられない。
それでも一緒に居たいから、毎週頑張っていたのに……。
今から頼み込んだら平日にデートしてくれるのかな。
約束の5回はもうとっくにクリアしてるし。
もし願いを聞いてもらったとしても、デートに栞がついて来たらどうしようかな。
ホントにやりきれないよ。
栞に渡したモンペは農作業の初日に私が着ていたもの。
紺色の生地に細くて白いストライプの線が入っている。
丈が短いから、多分拓真のお婆さんが愛用していたものだと思われる。
私専用に作ってくれた唐草模様柄のモンペは、ウエストも丈も採寸していないのにジャストサイズに作られていた。
でも、私が着用したモンペを簡単に貸して欲しくなかった。
初日以来着ていないけど、思い出深い物だから。
着替え終えてから一度居間に集まった。
拓真が外へと向かうと、栞が後ろからついて行く。
拓真が口を開くと、栞がすかさず返答する。
そんな様子を見ているうちに、先週までの立ち位置が、いつの間にか入れ替わってる事に気付かされた。
結局、事前から予想していた通り、私は紙の上に鉛筆で引いた線の上から消しゴムで消されてしまった傷跡のような薄い存在に感じた。
三人が畑に出ると、拓真から今日の作業の指示が与えられた。
栞は先週作業したジャガイモ収穫後の畑の耕し方を拓真から教えてもらう事になり、私は先週作業が中断したままのジャガイモの収穫作業を担当する事に。
栞は初めての農作業でテンションが上がっているのか、説明を受けている間も楽しそうに。
一方の私は、二人から離れた場所で一人きりでポツンと土いじりをしている。
でも、ここまでは大体予想通り。
惨めな結果が訪れる事は最初からわかっている。
やっぱり、来なきゃ良かったかな……。
和葉は後悔をしながらフーッと深いため息をつき、しゃがんだまま軍手の上にジャガイモを転がす。
時たま二人に視線をやると、学校の時と同様仲睦まじく作業を進めている。
明かに自分が初めて畑に来た時とは対応が違う。
悔しさばかりがこみ上げてきて、遠くからヤキモチを妬く自分がバカバカしく思えた。
でも、今日は無理をしてまでここに来た理由は、拓真に会う為だけじゃない。
ジャガイモの収穫作業に没頭していたら、急にお腹がグゥと鳴った。
最近は食欲が失せ気味だったけど、今日は一週間ぶりに拓真の家の香りを嗅いだせいか、腹時計がいつもの調子に。
もうすぐお昼ご飯の時間かな?
二人ばかりに気を取られないように自分のやるべき作業に集中していた和葉は、身体を起こしてうーんと大きく伸びをしてから目で拓真達を探した。
すると、拓真は隣の畑に移動して一人でネギの収穫作業をしている。
拓真が一人でいる姿を見たのはたった一週間ぶりだけど、最近は栞が付きっきりだったせいか久しぶりのように思えた。
和葉はジャガイモのケースを畑の隅に置いて作業に一区切りつけた後、拓真の元へと足を運ぶ。
「ねぇ、栞ちゃんはどこに行ったの?」
和葉はキョロキョロと見渡しながら拓真の横から問いかけた。
すると、拓真は作業した手を一度止めて目線を向けた。



