LOVE HUNTER



「じゃあ、さっきはどうして泣いてたんだよ。何でいつも暗い顔してんだよ。好きな女が辛そうに泣いてるのに、黙って見てろって言うの? 俺にだって感情はあるんだよ!」



出会ってから初めて怒りを露わにした敦士の怒鳴り声は、狭い路地裏中に響き渡る。
敦士が怒るなんて想定外だったから、身体は石像のように固まった。

敦士には辛い気持ちを伝えてないのに、瞳の奥は私を心配している。



私、さっき泣いてたの?
いつも暗い顔してたって……。



敦士に言われるまで自分の気持ちを疎かにしていた現状。
拓真を追いかけるのに必死で、涙が流れている事さえ気付かなかった。

恋が始まったばかりの頃は毎日がキラキラ輝いていたのに、今は大事なものを失う度に精神的に病んでいる。



「そんな表情をしてる原因……、俺には何となくわかってる。だって、毎日お前だけを見ているから」



敦士は先ほどの態度から一変させて、声のトーンを一つ下げた口調でそう伝えてきた。



今日の敦士はいつもと違う。
声や眼差しや気持ちで訴えかける今は、まるで別人のよう。

チャラい態度でヘラヘラしながら付きまとっている普段とのギャップが激し過ぎて気持ちは追いつけなくなった。


多分、敦士は気づいている。
拓真と宙ぶらりんな関係に。

そして、さっき何かをしでかそうとしていた事に。



ひょっとしたら、私が今以上に傷つかないように連れ出してくれたかもしれない。
少し強引な態度に出たのは、敦士なりの気遣いだったのだろう。

そう思ったら、申し訳なくて自然と頭が下がった。



「ごめん……」



厚い前髪で目元が隠れながら細々しい声で謝った。
さっきは知らぬ間に涙を流したせいか、目は腫れぼったく感じて目がしょぼしょぼしている。


ここ最近、感情が大波に飲み込まれ続けていたから、周りの事なんて目もくれなかった。
視界には拓真と栞の二人しか入ってこないほど、切実な悩みに押し潰されてした。

昨日、敦士は身体を心配してくれたのに、私は不安に溺れるあまり敦士の気持ちなど気にも留めていなかった。



すると、敦士は突然左腕を引いて力強く身体を抱きしめた。
それと同時に目線はあっという間に敦士の胸の中へ……。