LOVE HUNTER




『なぁ〜んかさ、気に食わない子だよね。拓真の前でかわい子ぶっちゃってさ』



ーー翌日の、授業の合間の短い休憩時間内。
昨日の昼休みに愛莉が言っていた言葉が、拓真の教室外にいる私の頭の中に何度も思い描かれていた。



今は拓真の隣のクラスの栞は柵の中にいて。
二年生の私は柵の外にいる。

栞は教室内に入る事が許されていて。
私は教室内に入る事が許されない。



将棋で言えば、歩兵の私は小さな争い事に巻き込まれながら、地道に相手の王将を目指していたのに……。

ひょいと後から現れた栞という飛車が、阻まれるものが一つもない状態から、王将に真っ直ぐ向かって行くという。

これは、不平等且つ理不尽なゲームに過ぎない。



なんか、こんなの全然面白くない。
スタート地点から大差をつけられてしまうと、重ねてきた努力が無意味に思えてしまう。

拓真と栞の傍には、同じ思いを抱えている愛莉が不機嫌そうに見守っている。
昨日までは愛莉に仲を邪魔されたくないと思っていたけど、今は不思議と心強い存在に。





ーー昼休みの時間になり、愛莉は栞を引き離す為に、少し早めの時間に昼食を一人で食べ終えたばかりの拓真に声をかけた。
隣のクラスの栞から引き離すには、昼休みのこのタイミングしかない。



「拓真、これから中庭に行くでしょ?」

「あぁ、昨日は栞を校内に案内していて行けなかったから、今日はちゃんと行かないとな。あいつとの約束だし」



愛莉は昨日に引き続き、今朝からしきりにつきまとっている栞からようやく引き離す作戦に成功したと思ってホッと胸を撫で下ろした。
本当は昨日みたいに断られるかと思って、内心ドキドキしていた。



拓真は手元の荷物を片付けて席を立ち、中庭を目指して愛莉と一緒に教室を出た。

ところが……。



「あ、拓真発見! ねぇ、これからお友達と二人でどこへ行くの?」



拓真と愛莉が肩を並べて廊下を歩いていると、二人の存在に気付いた栞は背後から小走りで駆け寄って来る。

拓真と同時に振り返った愛莉は、再び栞の姿が瞳に映し出されると、嫌気がさすあまり眉をひそめた。



「今から坂月さんと一緒に中庭に行こうかと思ってて。今日は秋晴れだからいい日向ぼっこになりそうだな」



拓真はそう言って微笑むと、栞はキュッと口角を上げた。



「じゃあ、私も一緒について行っちゃおうかなぁ」

「それより、転校して来たばかりだから早く新しい友達を作った方が……」


「いいの。私は幼い頃から拓真が一番の友達だから」



栞は甘え口調でそう言うと、隣にいる愛莉が見えていないかのように間に割り込んだ。


愛莉は会話の内容からして二人が幼馴染だと言う事を把握したが、過去の関係や拓真のトラウマなど知らない。
だから、間に割り込んで来ても何故か断ろうとしない事に疑問を感じていた。