拓真が栞と運命の再会を果たした日の、翌々日の学校の昼休み。
今日は時間割の都合と、恋路の邪魔をしてくる敦士のせいで、朝から拓真に会えずじまいだった。
だから、いつもより早めに教室を出て、先に中庭の花壇のレンガに腰を下ろして待っていた。
教室を早く出た理由は、敦士から逃げる事だけじゃなくて、一昨日拓真の家から早く帰らされた時間分を補うつもりもあった。
恋の栄養は備蓄できない。
常に栄養を与えてもらわないと、恋の花は咲けない。
逆に栄養を与えてもらえなくなったら、すぐに枯れてしまうだろう。
昼休みに会うと言っても、愛莉というコブ付き。
愛莉が学校を休めば二人きりになれるけど、彼女は見た目以上に頑丈だからほとんど休まない。
もちろん、私も同じく休まないタイプだから、愛莉も同じ事を思ってるはず。
和葉は拓真が出てくる校舎を見つめていると、愛莉が一人で中庭へ……。
しかも、腕組みしながら不機嫌そうに頬をプクッと膨らませている。
「なに、あの女。ムカついちゃう」
明らかに不機嫌なのはわかったけど、隣に拓真がいない事が気になる。
「ねぇ、何でそんなに怒ってるの?」
「実はさ、隣のクラスに転校生の女子が来たんだけど、拓真に一日中ベッタリなの。随分親しげなんだよね」
「えっ、この時期に転校生?」
「そ。休み時間中もずっーーと拓真に付きっきり。拓真もまんざらじゃないみたい」
花壇に腰をかけている和葉の隣にドカッと座ってしかめっ面でそう言うと、和葉の脳裏にはある人物が描かれた。
栞だ……。
この学校に転校してきたんだ。
確か一昨日、拓真に同じ学校に転校するとか言ってた。
「もしかして、その子の名前は栞じゃない?」
「そうだけど……。どうしてオバさんがその子の名前を知ってるの?」
「知る機会があって……」
「ふーん……。なぁ〜んかさ、気に食わない子だよね。拓真の前でかわい子ぶっちゃってさ」
「……」
愛莉はまつ毛を伏せて黙り込んだ和葉に目線を当てて、話を本題に移した。
「ここで待ってても拓真は来ないよ。さっき、『今日は中庭に行けないって和葉に伝えて』ってさ。ほんっと気に食わないよね」
「……そっか、わざわざありがとう」
「何かさ、残念って言う言葉だけで片付けたくないよね」
愛莉はまるで同情をしたかのような目を向けると、ポンッと肩を叩いて教室へ戻って行った。
栞が現れてから一番最初に犠牲になったのは拓真と二人きりの時間。
しかし、これは悲劇の序章に過ぎない。
ーーこの時の私はまだ油断していた。
何故なら、先日校内で人目を憚らずに手を握りしめてくれた時の温もりを信じていたから。
拓真が抱えていたトラウマを何処か他人事だと思っていたのかもしれない。
だから、栞と言う人物を甘く見ていた。
拓真はいっ時の物珍しさのように、付きっきりになっているだけだと思っていた。



