今日は学校を終えてから、そのまま新しい勤務先のコンビニバイトに行った。
先週からシフトに入れてもらえるようになって、最初は覚える事が沢山あってあたふたしていたけど、勤務スタートから一週間経つと仕事も一通り覚えてきた。
夕方の忙しいピークの時間帯を過ぎると、客足も徐々に途絶え始めていた。
だから、同じくシフトに入っている大学生のマジメ系の山田さんに、コミュニケーションの一環としてプライベートな質問をした。
「ねぇ。山田さんって、いま彼女いるの?」
「え……。僕ですか? 今はいないです」
「じゃあ、好きな人は?」
自分に興味があるのではないかと勘違いさせてしまうくらい、和葉は質問攻めに。
いま本気の恋をしているだけに、人の恋が気になって仕方ない。
「いっ、一ノ瀬さん……。結構グイグイ来ますね」
「勘違いさせたくないから先に言っておくけど、山田さんには興味ないから」
可愛げのない返事は間髪入れずに告げられた。
何故なら敦士以上に面倒な事態を引き起こしたくないから。
「……ははっ。好きな人はいますよ」
「ふーん。どんな人なの?」
「高校時代の友達の妹です」
「ふぅん……。片想いってさぁ、なかなか思うようにいかないよね」
和葉は友達に相談出来ない話をこぼした。
隣から元気のない返事が届くと、山田は和葉の悩みに気付く。
「恋が上手くいかないんですか?」
「好きな人と恋人になるまであと一歩的な気がするのに一進一退でね。ゴールが遠いよ〜」
和葉は何度もアプローチしてるのに、なかなか繋がり合わない現状に頭を悩ませていた。
「その恋って、そんなに焦る必要があるんですか?」
「……え?」
「ゴールが近くないなら恋を楽しめばいいじゃないですか。恋が始まった瞬間からゆっくり温めてきたようにね」
ーーそう。
最初の頃は山田さんが言う通り、ゆっくり焦らずに恋愛をしていけばいいと思っていた。
しかし、最近は愛莉や敦士の出現により本調子が狂わされて、自信喪失していたのかもしれない。
拓真を独り占めしたいって思う独占欲と、度重なるアクシデントによって、最近は気持ちがアンバランスになりつつあった。
「恋を楽しむ……か。そうだよね。傍にいるだけでも幸せだって思えるんだもんね。最近は恋愛を楽しもうって前向きに考える事をすっかり忘れてたよ。ちなみに山田さんは恋愛上手なの?」
「いや、そんなでも……」
「またまた〜。今まで何人くらいの女性と付き合ったの?」
「えぇ……とぉ。一人……かな……」
山田は頬を赤く染めながらしどろもどろ言った。
だが、隣から不服そうな声が届く。
「え、たったの?」
「たったのと言われても……」
「和葉なんて三十……。あれ? 何人だっけ。途中まで数えてたんだけど、もう忘れちゃった」
「その年で、そんなにたくさんの人と……」
お互い異性と付き合った人数は大幅に違ったが、恋を楽しむという山田のアドバイスは和葉にとって心強い言葉に……。



