LOVE HUNTER




昼休みがこんなに待ち遠しいと思った事はない。
拓真から会いに来たと言う事は、きっと用事があったはず。

もし敦士との仲を誤解してたら、早く誤解を解かなきゃ。



昼食中も友達との会話が耳に入っていかないほど苦しい時間が続いていく。
約束の時間の5分前になると、転びそうな勢いで中庭に向かった。







ハァハァと息を切らしながら日差しが降り注ぐ中庭に到着したけど、拓真どころか生徒は誰一人いない。

拓真が来たら昨日ライブに行った理由を伝えよう。
それに、教室に来てくれた理由と、黙って去った理由も聞きたい。



和葉は思い詰めながら花壇のレンガに座って背中を丸めて俯いていると……。



「か〜ず〜は!」



横から陽気に呼び止める声が届いた。
呼ばれた瞬間、咄嗟反応によりバネで弾けたように顔を上げる。



「拓真……?」



しかし、そこに現れたのは拓真じゃなくて、誤解を生む要因になった敦士の姿が。
思わず落胆した。



「なぁ〜んだ、敦士かぁ」

「悪かったな、俺で。教室に行っても居なかったから探し回ったよ」


「ねぇ、私ばかり追いかけないでよ」

「俺はいつも和葉に会いたいの」



敦士はポケットに手を入れたまま隣にストンと腰を落として、和葉の顔を覗き込んだ。
だが、和葉は表情は歓迎してない。



「昨日も今日もいっぱい会ったでしょ」

「もっといっぱい会いたい。こう見えても一途なんだよね」


「やめてよ」



心の中がぐるぐると渦巻いていたから、少し強い口調で言った。
でも、敦士の眼差しは真っ直ぐに突き刺してくる。



「俺は辞めないよ。お前の心が向いてくれるまで」

「もう、調子いいんだから……」



和葉はムッとしたまま拳を上げて殴りかかろうとすると……。
視界の隅から愛莉と肩を並べて来る拓真とバッチリ目が合った。


『あ、まずっ』と思った頃には、既に時遅し。
拓真は目線を合わせたままズンズンと足を進めて、3メートル手前で足を止めると、上から目を見下して言った。



「ごゆっくり」



嫌味ったらしく伝えると、来た道をUターンして行き、愛莉は焦るように背中を追った。



和葉はショックを受けると振り上げていた拳が自然と落ちていく。
すると、敦士はすかさず興味を湧かせた。



「ねぇねぇ、想いを寄せている相手ってあいつでしょ? 校内で噂の背がデカイイケメンの一年坊主だろ?」

「あーもう、うるさい! 早くあっち行ってよ」


「女連れてんじゃん。あんなのどこがいいの? 『ごゆっくり』だってさ。なんかふてくされたような言い方だったけど、俺達に気ィ使ってんのかな」



こっちは撃沈しているのに、敦士は隣から気持ちを逆撫でしてくる。
でも、『ふてくされたような言い方』というキーワードが引っかかった。




……ん、待てよ。
ふてくされたような言い方?

もしかして、ふてくされてるという事は、少しは私に気があるって事?
『ごゆっくり』の反対語は『早くして』って意味でしょ。
『早くして』って事は、早く敦士から離れてくれって意味かな。


ムフフ……。
なぁんだ。
拓真ったらヤキモチ妬いてたんだぁ。
だから、急に不機嫌になっちゃったんだね。

今朝は敦士と二人きりの姿を見て腹が立ったから、何も言わず帰っちゃったのか。



「ふっ……ふふふっ……」

「……!(ビクッ)」



拓真の気持ちを先読みした和葉は、腹の底から湧き出る笑いが止まらなくなった。
その隣で百面相を見ていた敦士は、怖くて顔を引きつらせていた。