会計を済ませる頃にはだいぶ気分も落ち着いていた。
受付の背面に飾られている時計に目を向けると、時間の針は昼の12時を過ぎをさしていた。
「やべぇ、婆ちゃんに連絡するの忘れてた」
「お婆さん心配してるかもしれないし、お昼ご飯を作って待ってるかもね。連絡したら急いで帰ろうね」
拓真は病院の自動ドアを出てからスマホを取り出して自宅に電話した。
ところが、電話を持ったまま何かに気付いたような素振りを見せた瞬間、想定外のひと言が。
「あれ……。病院までどうやって来たっけ」
私が怪我をしてからパニックを起こしてしまったのか、何故かその記憶がスコンと抜けてしまっている。
「えっ! 拓真のバイクに乗って来たじゃん。ニケツしたのを忘れたの?」
「あぁ……。そうだった」
人は見かけによらない。
手際よく動いたように見えても、本当は記憶が飛んじゃうくらい気が焦っていたんだね。
和葉は電話を終えたタイミングで言った。
「心配かけさせちゃってごめんなさい。それと、すぐに病院に連れて来てくれてありがとう」
「……怪我は俺の不注意だったから。もっとしっかり見てやれば良かったって反省したよ。痛かっただろ」
「どっちかって言うと怖かった……。でも、拓真がずっと隣に居てくれたから心強かったよ」
肘の怪我はミスから生じたものなのに、拓真は異常なくらい責任を感じている。
病院のバイク置き場に戻って、拓真から受け取ったヘルメットを装着。
バイクの後部座席にまたがって、運転席に座った拓真に後ろからぎゅーっと抱き付いて背中に耳を押し当てた。
エンジンがかかると、拓真はバイクを走らせる前に振り向く。
「なるべく傷が痛まないように安全運転で行くけど、今度はバイクから落ちて怪我をしないようにしっかり掴まってろよ」
「うん!」
拓真は腰へ巻いている腕にロックをするかのように、上から一度ギュッと手を重ねた。
こんな小さな事でさえ胸がドキドキする。
バイクが発車すると、私達はお互い髪をなびかせながら同じ風に乗った。
スピードを上げると、景色がどんどん様変わりしていく。
パタパタとはためく服にしがみつき、背中から彼自身のぬくもりを感じた。
本当に今が一番幸せだと思った瞬間だった。
私はLOVE HUNTER
怪我をして痛い思いはしたけど、抱きしめている背中はとても広くて大きかった。
拓真のバイクに乗ってる間は、ドキドキしすぎて心臓が破裂しそうだった。
大好きを100回唱えても足りないくらい拓真が好き。
ずっと幸せな時間を過ごしていたいから、二人だけの時間よ、このままトマレ!



