和葉の教室を訪れた日を境に、敦士は廊下でよく見かけるようになった。
それもそのはず。
別棟の拓真とは違って、敦士のクラスの3-7と和葉のクラスの2-1は教室が二つ分しか離れていないのだから。
ふとした拍子に廊下でバッタリ会うようになり、想像以上のスピードで接近していく。
敦士は見た目が派手な友達が多い。
金髪男やピアス男やヘッドホン男など。
敦士のグループはあまりにも目立つから、近くで見かける度に物珍しい目で追ってしまう。
知らないから、知るになり。
知ってしまったからには、少しずつ興味が湧いていった。
それは、好きと言う意味ではなく、自分に好意を寄せている男性として。
ーー敦士と出会ってから2日後の昼休み。
昼休みに拓真と会うようになってから、恋愛の進行状況を未だに秘密にしている祐宇と凛には、別のクラスの友達のところへ遊びに行くと伝えていた。
毎日決まった時間に席を外しているから、さすがに何かを察しているだろう。
そして、今日も教室内で三人で昼食を終えてから、いつも通り中庭に行こうとすると……。
「あー、いたいた! 俺、和葉ちゃんにすげぇ会いたくなったから来ちゃったよ〜」
教室の後方扉から出て行こうとしていた和葉は、開いている扉に蓋をするかのように出現した敦士によって行く手を阻まれた。
脳内モードがすっかり拓真に切り替わっていたが、急に不都合になる。
「ねぇねぇ、どこ行くの?」
敦士は両手をズボンのポケットに突っ込んで、前のめり気味に上半身を近付けて聞いた。
彼は黙っていれば普通にいい男だけど、口を開けば馴れ馴れしい。
いつもヘラヘラしながら、人の気持ちをお構いなしに土足で踏み込んでくる。
でも、今は敦士の相手をしてる暇ではない。
中庭で拓真が待っているから、一刻でも早く向かわなければいけないのに……。
「いま急いでるから敦士の相手が出来ないの。ごめん、ちょっとそこをどいて」
和葉は壁になっている敦士の横を、小さくくぐってすり抜けた。
だが、敦士は諦めず声で引き止めた。
「和葉ちゃん、今から何処に行くの〜? 俺と話そうよ〜」
「またね! バイバ〜イ」
勿論、自分の恋が大事。
敦士の相手なんてしてられない。
拓真が待ってる限り私は行く。
だけど、出遅れが原因だったのか。
お互いの教室の棟が離れているせいもあるのか……。
先にベンチで腰を下ろしていた拓真は、隣に座る愛莉とスマホを片手に楽しそうに話をしていた。
話に盛り上がりを見せている二人を見た途端、沸々と嫉妬心が沸き起こる。
拓真は農作業を減らした1時間分を、平日ので補おうとしてるのに、愛莉という金魚の糞付きだとするなら、どう考えても割に合わない。
愛莉が来るくらいなら、以前みたいに朝早い農作業で構わない。
愛莉は非常に邪魔者だ。
拓真と同じクラスだから教室で会えるくせに、たった一日に二回しか会えない恋路の邪魔をするなんて悪意しか感じられない。
しかも、耳を澄ませばまたスマホの話題。
愛莉は拓真がスマホ好きと知っているから、わざと得意分野を突いてくる。
毎回同じような話題ばかりで、聞いてるこっちは耳にたこだよ。



