全身ずぶ濡れ状態の和葉が帰宅すると、父親は玄関までバスタオルを持って出迎えてくれた。
ところが、部屋の奥からは聞いた事のない鳥の鳴き声がする。
和葉はバスタオルを受け取ってから父親に聞いた。
「もしかして、家の中で鳥が鳴いてるの? それともテレビの音? 鳴き声がやけにリアルなんだけど」
「あはは。鳥の鳴き声はテレビじゃないよ。リビングにインコがいるから見てごらん」
胸をワクワクさせながら父親の後についてリビングに入ると……。
テーブルの上に置いてある鳥かごの中には、白ベースでブルーと黒と黄色が混じった羽のインコが一羽、カゴの中央に設置されている一本の棒に止まっていた。
和葉は物珍しい目でグッと近付いてカゴの中を覗き込む。
「わぁ! 可愛い。……でも、どうしてインコを?」
「私はこれから年末にかけて繁忙期に入るから、残業で帰宅が遅くなっても和葉ちゃんが寂しくないように、この子を飼う事にしたんだ。私からのプレゼントだよ」
「ペットを飼うのは初めてだから嬉しい。インコって色鮮やかなんだね。性別は?」
「メスだよ」
「良かった。和葉は昔から妹が欲しかったから、同じ女同士で仲良くしなきゃね」
和葉は父親に次いで、新しく家族の一員になったばかりのインコに嬉しさが込み上げた。
「ペットショップの店員に聞いたんだけど、この子はもう大人だから人懐っこくてお話をするのがとても上手らしい。インコはオウムほど上手く話せないけど、教えたい言葉を復唱していけば少しずつ覚えるかもしれないね」
「へぇ、お話が出来るんだ。凄いね」
和葉は父親の話を聞いてから、早速言葉を教えたくなった。
「インコさん、和葉だよ。和葉だよ。和葉だよ。もう覚えたかな?」
「あはは、流石にそんな早く覚えないだろう」
父親は腕を組みながら気が早まる和葉を見てケタケタと笑う。
しかし、言葉を覚えるのは当分先だろうと思っていた矢先、奇跡は起こった。
「カズハ……ダヨ」
教えてから1分もしないうちに言葉を覚えたインコに、二人は驚きを隠せない。
「うわっ、凄い! 喋ったけど棒読みで感情がこもってない上に声が低っ」
「この子はなかなか記憶力のいい子だね。名前は和葉ちゃんが決めていいよ」
「ありがとう! ねぇ、おじさん。インコを自分の部屋で飼ってもいい?」
「いいよ。大事にお世話をしてあげてね」
和葉はバスタオルを首に巻いたまま、鳥かごを持って二階の部屋に運び込んだ。
新しいペットに愛情が湧き始めてきた和葉は、家族入りしたばかりのインコに夢中に。
「名前は……。そうだ、ハナちゃんにしよう。羽の色が華やかだからハナちゃんね。ハナちゃん、これから和葉と仲良くしようね」
「カズハ ダヨ カズハ ダヨ」
「違う違う。君の名前はハナちゃん。可愛い〜。まぁ、超絶美人の和葉より少し見劣りするけど」
「……」
ハナちゃんがメスだとわかった途端、何故か負けず嫌いな一面が顔を覗かせてしまう。



