「ゴホゴホ……。和葉ちゃん。寝ている間にお昼ご飯を作って枕元に置いてくれてありがとう。でも、食欲がないから後でいただく……」
お婆さんは食事を用意してくれた和葉に感謝の意を伝える為に部屋にやって来たのだが……。
二人の親密な様子を見て言葉を失った。
お婆さんの目線の先には、拓真に馬乗りになって強引に唇を近付ける和葉と、和葉の両肩を掴んでキスを拒む拓真。
度が過ぎたおふざけとは言えども、日中から居間で堂々といちゃいちゃしてる姿は刺激的だった。
二人は誤解されるような体勢を目撃されてビックリすると、身体が密着したまま硬直状態に。
「ば……婆ちゃん…………」
不意打ちを食らった拓真のそのひと言が目覚ましのサインに。
まるでこの事実を帳消しにするかのように、赤面のままガバッとお互いの身を剥がした。
しかし、事実が消える事はない。
お婆さんは二人が密な関係に発展したと、しっかり誤解している。
「あら、お盛んだ事。ゴホゴホ……若いお二人の間を邪魔してごめんなさいね。ゴホゴホ……」
お婆さんはニヤリと不敵な笑みを浮かべながらキツイ冗談を言い残すと、襖を閉めて姿を消した。
襖が閉まると同時に、拓真は顔面蒼白のままスクッと立ち上がる。
「待っ……て、婆ちゃん……」
声で引き止めようとしている辿々しい日本語は、既に姿を消したお婆さんに届かない。
拓真はキッと睨むとこう言った。
「お前が先にクダらない冗談を始めるから誤解されただろ。どうしてくれんだよ!」
「はぁ? 私のせいにしないでよ。拓真がグズグズ渋っていたから運悪く目撃されちゃったんでしょ。唇をぺろっとひと舐めしてくれれば済んだ話でしょ」
「俺がそんな事する訳ねぇだろ! あー言えばこー言いやがって。迷惑だからいい加減にしてくれよ、この万年発情期のエロ女!」
「何よ! この勇気なしでロクデナシのカタブツ男」
取り返しのつかない現実にやりきれなくなった二人は、エンジンがかかってしまったかのように衝突した。



