「お前、何やってんだ」
「ほら、ここ! ここ! この辺にケチャップが付いてかも。あーっ、自分からじゃよく見えないなぁ。どこかなぁ、どこかなぁ……? あぁ〜、ケチャップが勿体ないなぁ」
「あのな……。俺にもう一度同じ事をしてもらいたくて、わざとケチャップを塗ったんだろ。しかも、唇に塗るなよ」
拓真は内心が丸見えな和葉にドン引きする。
「さっきはケチャップを舐めてくれたじゃん。本当は和葉の唇を舐めたかったんじゃないの?」
「はぁ? そんな訳ないだろ」
悪巧みを始めた和葉は、更に唇を前に突き出して拓真の方へ身を乗り出してグイグイと迫る。
だが、拓真は接近してくる身体を遠ざけるように肩を掴んで身体を引き離した。
「次は指先じゃなくて直に唇を舐めた方が美味しいかも」
「アホか! 彼女でもないのに舐める訳ないだろ。先週ベッドで襲いかかってきた件と言い懲りない奴だな」
「ふぅん。彼女じゃないと舐めてくれないの?」
「今そんな話はしてないし! お前の頭の中は、一体どーゆー妄想をしてるんだ」
少々手荒になっている和葉は更に身を乗り出して、顔同士の距離を15センチまで縮めた。
しかし、反論する拓真は和葉の肩を固定して、唇を遠ざけようと必死に身体を逸らしている。
「じゃあ、和葉と付き合ってくれればいいじゃん。彼女になってあげる」
「ヤメろ。そーゆー問題じゃないし、俺に向かって唇を突き出すな」
「早くぅ。キスで拭ってくれないとケチャップの塩分でデリケートな唇が荒れちゃうよ」
「するか、アホ! お前の唇以前に俺のデリケートな心が荒れ果てるだろ」
しつこく迫ってくる和葉が勢いよく前のめりになると、体勢を崩した拓真の身体は背後の床へ転がって和葉に押し倒されたような状態に。
ーーしかし、ちょうどその時。
突然居間の襖扉がスーッと開いて、部屋で寝込んでいるはずのお婆さんがのっそり姿を現した。



