LOVE HUNTER




和葉は拓真との幸せな時間を満喫しながら、米粒一つ残さずにオムライスを完食した。
すると、拓真は和葉のある箇所に目線が吸い込まれる。



「女のくせにきったねぇ食べ方だったな。……ほら、付いてるぞ」

「え、何が?」


「唇の下にケチャップが付いてる。……ったく。ガキじゃないんだから、もっとキレイに食えよ」



拓真はケチャップで汚れた和葉の唇を見て小馬鹿にしたように笑う。
和葉はケチャップを舐め取ろうとして、舌をペロッと出し左から右へと唇全体を舐め回した。



「ねぇ、これでケチャップ取れた?」

「まだ」


「じゃあ、ここかな?」



和葉は再びペロペロと舌で唇を舐め回す。
右に左にと、お行儀悪く唇を舐めまわしているが、なかなか的に届かない。

拓真はそんなもどかしい様子にイライラしてしびれを切らすと、和葉の顔に人差し指を近づけた。



「あーっ、もうじれったいな。そこじゃねぇよ。ここ!」



ぶっきらぼうにそう言うと、指先が和葉の下唇に触れて、そのまま上にすくってケチャップを絡め取った。



「えっ……」



和葉は予想外のワンタッチに思わず声が漏れた。

指先が唇に触れる程度なら、胸がドキッとする程度だけど、ケチャップがついた指先は彼の舌先でペロリと舐め取られた。



これは、一大事件だ。
まさかの間接キス。

唇に触れた指先が拓真の舌で感じたと思うだけで緊張に包まれた。



ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ



顔が火照って熱い。
心臓がバクバクうるさい。

キスは数えきれないほど経験してきた。
だから、間接キスなんて全然大したことじゃないのに、拓真の指先が唇をなぞった瞬間、まるで本当のキスをしたかのように刺激的だった。



すっかり夢の世界に舞い込んでしまった和葉だが、ここから一気に悪知恵が働き出す。



唇にケチャップが付いていれば……。
拓真に舐めてもらえる?
……と言う事は。



和葉はオムライスを平らげたお皿に目を向けると、お皿の隅にはほんのわずかな量のケチャップが付着している。
当然、そこに着目した。

(よこしま)な考え方は、予想以上の妄想を膨らましていく。



ケチャップはまだお皿に残っている。
拓真はケチャップを舐めたい。

じゃあ、ケチャップを私の唇に塗ったら……。
ケチャップは、ケチャップは……。



和葉はまるで悪魔に乗っ取られてしまったかのように、イケナイ妄想が暴走していく。
肩を揺らせるほど湧き上がってくる喜びの衝動は、どうしようもないほど抑えきれない。



和葉は人差し指で皿からケチャップをグルリと拭き取り、まるでグロスを塗るかのようにケチャップを唇に塗りたくった。
迷いはなかったが、悪意はあった。



「ねぇねぇ、ここにもケチャップが付いてる?」



和葉はケチャップを口紅のように万遍なく塗った唇に指をさして、テレビを見て寛いでいる拓真に伝えた。

拓真はその様子を見て呆れるが、和葉は唇を突き出してケチャップ汚れに注目してもらおうとして指をさす。