LOVE HUNTER




昼休憩の30分前に作業を切り上げた和葉は、拓真にひと声をかけてからキッチンに向かった。

お婆さんと拓真に実力以上の期待させて台所に立ったまではいいものの、何から始めればいいのかわからない。
その上、人の家の台所となると勝手がわからない。



急遽料理を作る事になったし、どんなものを作るか考える余裕もなかったから、とりあえず冷蔵庫を開けてヒントになりそうなものを手探りした。

冷蔵庫の野菜室には、自家製と思われる野菜が沢山入っている。
次に食品庫を開けると、ストックの缶詰もズラリ。




どうしよ、何作ろうかな。
それ以前に何も作れないけどね。

だけど、プライドが邪魔して何も出来ないと思われたくない。
拓真はまだ成長期だろうから、栄養があって野菜が沢山食べれるメニューがいいかもなぁ。


うふふ。
私ったら栄養の心配なんてしちゃって、まるで拓真のお嫁さんみたい。



野菜だけじゃなくてタンパク質も一緒に採れた方がいいよね。
一日に摂取する品目は多い方がいいって言うし、冷蔵庫には食材がたっぷり入ってるから、どうせなら色々入れてみようかな。


あ、そうだ!
デザートも必要かな?
具材を混ぜる料理の方が手間もかからないし、ワンプレートの方が食べやすいかな?

よし、決めた!
メニューは栄養盛りだくさんのアレにしよっと。




和葉は午前中の作業を終えてお腹を空かしながら居間で待つ拓真の元へ、所々指に絆創膏が貼られた手でベチョベチョした白い物体がお皿に乗っている料理を出した。



「はぁい、お待たせぇ〜。超豪華スペシャルランチだよ。栄養盛り沢山! 遠慮なく召し上がれ。お代わりもいーっぱいあるからね」



手料理がちゃぶ台へと置かれた瞬間、今までに嗅いだ事の無いような異臭が漂ってくる。
拓真は思わず手で鼻を覆うが、悪臭はまるで蛇行するかのように指の間をすり抜けてくる。
悪臭に堪え兼ねると思わずむせた。



「ゴホッゴホッ。うわっ、何だコレ! 臭ぇ……」

「はぁああ?! 料理なんだから臭い訳ないでしょ。何だコレと言われても見たらわかるでしょ。和葉の愛情がたんまりとこもった手料理だよ」


「見てわかんねーから聞いてるんだろ。(ひょっとしてリゾットかな? でも、匂いがおかしいな。……すげぇ。香りだけで吐き気がしてきた)」

「味には自信があるから食べてごらん。(まぁ、味見はしてないけどね)」


「いや、香りから(マズさの)想像がつくから、食いたくない。(やべ……。鼻の神経がイッたかも)」



和葉は拓真の失礼極まりない態度に腹立たしく思い、ムスっとする。



「この前、和葉に『好き嫌いすんなよ』って言ったのは拓真でしょ。ほら、好き嫌いしないで早く食べて。食べないと午後の力にならないよ。」

「でも……。コレ、本当に食えるの?」

「当たり前でしょ!」



ひと口目を口に入れるのになかなか勇気が出ないが、謎の料理をスプーンに半分だけ盛って、息を飲んでから震えた手つきで口に放り込んだ。

しかし、口の中に入った途端、それぞれの素材の味と香り同士がケンカを始めた。