LOVE HUNTER




一人で待ち始めてから2分もしないうちに、授業を終えた生徒達がちらほらと下駄箱に集まって来た。



作戦はいよいよ決行の時を迎える。



メガネくんがあと数分以内にここに現れるかと思うと、何故か胸がドキドキしてきた。
但し、これが恋じゃない事だけはわかっている。

きっと緊張とか可愛らしいものじゃなくて、また意地悪を言われたら嫌だなという恐怖心かもね。



さっき名前までは伝えられなかったけど、一度会話を交わしたから私の愛くるしい顔だけは記憶に刻まれてるはず。
次は名前を伝えなきゃね。




和葉は気持ちを前向きにさせて健気に拓真を待ち続けた。
次第に一年三組の生徒は、ポツポツと下駄箱に姿を現すように。

しかし、生徒達は下駄箱に到着するなり、腕を組んで壁にもたれかかる和葉の顔をチラ見していく。
だから、和葉も同じように見返す。



人が来る度に顔を見たり見返したりの繰り返しで、ちょっと気分が悪い。
ひょっとして、誰かに告白でもするんじゃないかって勘違いされてるのかな。


見せ物じゃないんだよ。
勘弁してよって言ってやりたい。

でも、私の可憐で華麗な印象が悪くなるから、絶対に言わないけどね。



下駄箱前で八人目をカウントした後、待ちわびていた拓真は姿を現した。

彼は友達と賑やかに帰宅する他の生徒とは違い、視線を落として歩いているせいか下駄箱で待つ私に気付かない。

だから、道を塞ぐように正面に立った。



出会い作戦、第二幕……。
決行っっ!


バンッ……


和葉は左手で下駄箱扉の音を大きく鳴り響かせるほど勢いよく叩き、拓真の進行方向を塞いだ。
と、同時に肩までの短い髪は揺れる。

拓真は存在感たっぷりの和葉に気付いて目を合わせた。



和葉は軽く顎を引き上げると妖艶な目を向けた。
唇にたっぷり塗りたくったチェリーピンクのグロスは、影になってもセクシーに光り輝いてるはず。
甘い香りが漂うブランドの香水は首元に2プッシュ振り撒いた。



清純派の出会い方がダメなら、大人っぽくセクシーに迫る。
これは、LOVE HUNTERの鉄則。



「さっきはどうも。自己紹介はまだだったからね。私は一ノ瀬和葉、二年一組。顔と名前くらいは覚えてね! ヨロシク」



艶やかなキメ顔でニンマリと微笑み胸を張った。