「ふんっ、こっちが大人しくしてりゃあいい気になりやがって。さっきから理屈を並べてるけど、結局アンタもお姉ちゃんに好かれたいだけなんだろ?」
「は? お前と一緒にするな」
「だったら、アンタはお姉ちゃんと一体どんな関係なんだ」
男は二人の関係をはっきりさせてから、次の手を考えるつもりだった。
一方の和葉は、拓真の本音が聞けるチャンスだと思い、黙って精神を集中させた。
「コイツとどんな関係だって?」
「あぁ」
「そんなに知りたきゃ教えてやるよ。……コイツは俺の大事な人」
拓真の口から《大事な人》と位置付けられた瞬間、和葉は胸がドキンと鳴った。
嘘……。
私が拓真の大事な人だなんて。
「あいにく、コイツはあんたの思い通り遊んでる暇はない。俺はコイツと週末に特別で大事なことをしなきゃいけないんでね」
「特別で大事なことをするって、何だよ」
男は気になるセリフが耳が止まると、歯を食いしばりながら聞き返した。
拓真が自分の事を大事な人と位置付けてくれたのは、非常に嬉しかったけど……。
週末に特別で大事な事と言ったら、残念ながら思い当たる節が一つしかない。
そう……。
それは紛れもなく農作業。
深緑色の唐草模様のモンペと、ベージュの小花柄のダサいブカブカのシャツを着て、広大な畑の中で虫と格闘しながら泥まみれになって無言&無心になって働く、あの農作業だ。
「さぁね」
拓真は鼻にかけたような嫌みたらしい返事をしたけど、間違いなく農作業でしょ。
以前までツンが生意気で腹立たしく思ったけど、どうやら今はこのツン攻撃がいい具合に役に立っている。
さすが、ツンデレ。
別に隠すほど大それたものではないが、こうやって謎めかすのも想像力が広がって逆に効果があるかもしれない。
確かに、週末に私がいなくては困る。
毎週足を運んでいると、人手不足な状況が身に染みた。
あの広大な敷地を管理していくには拓真一人だけじゃ大変だから。
和葉には《大事な人》という意味がはっきり伝わったが、二人の関係が何も知らない男には曖昧さが残されたまま。
しかし、掴み上げられた身体は徐々に持ち上げられていき、足が地面から離れた。
服で首がしまっていき、息苦しくてこれ以上の質問が出来ない。
一方の拓真は、男の力を見極めると余裕顔を見せた。
「ほら、俺に腹が立ってんだろ? 何ならやり返してみる?」
「……っぐ」
「それとも潔く観念する? 俺はまだ未成年の青臭いガキだから、どちらか一方を選ばせてやるよ」
男の首は更にキツく締め上げられて顔に血が上り、苦しそうにもがく。
もう、この時点で勝負はついていた。
男よりも断然に背が高くて、鍛えられた体格の良い拓真の方が圧倒的に腕力が優っている。
男はどんなに逆らっても、拓真の力には敵わないと確信した。



