「正直に言うと、オバさんが羨ましかった。だから、意地悪をしたくなって馬鹿げた真似をしたの」
「……え。私の何が羨ましいの? ひょっとして、この美しい美貌かしら。嫌だわぁ。美しいって罪ね」
和葉は制服のスカートのポケットから出した手鏡を正面に持ち、乱れた髪を直し始めた。
「そっちじゃねーよ」
「じゃあ、どっちよ」
「……ご想像にお任せするわ。(オバさんが教室から去って行く姿を拓真が目で追ってるなんて知ったら調子に乗りそうだから教えてあげない)」
「まぁ、私の美貌に勝る女なんて、この学校にはほとんどいないけどぉ」
自意識過剰な和葉は、謙虚という二文字を知らない。
「ゴホン……。(勝手に言ってな)先日の件は拓真にも事実を話したの。オバさんが私に怪我を負わせたんじゃないってね」
「えっ! ……そしたら、拓真は何て?」
「『素直に白状してくれてありがとう。嘘はダメだけど、白状するのは勇気が必要だっただろう』と言ってくれて、嘘をついた事に怒ったりしないで素直に受け止めてくれたの」
「そうだったんだ」
何となくその光景が目に浮かんだ。
拓真が私に誤解を解きに来てくれたあの時のように、穏やかな口調でそう伝えたんじゃないかって。
愛莉が反省の言葉を口にしたって事は、きっと拓真の思いが通じたのかもしれない。
拓真が私を突き放した時は理不尽だなと思ったけど、最終的に下した判断は間違ってなかったよ。
「拓真があまりにも優しく言ってくれるから肩の荷がスッと下りたの。そしたら、オバさんにも早く謝らなきゃって。意地汚い手を使って近付いても意味がないと思ったの」
「反省してくれたんだ……。謝りに来てくれてありがとう」
「勘違いしないで。謝ったのはオバさんの為じゃないから。でも、この件を通じて尚更拓真が好きになっちゃった」
「え……」
「もう二度と卑怯な手を使わないからフェアに行きましょ。お互いにね」
愛莉は肩にかかっている艶やかな長い髪をフワッと払い、ツンっとした態度で去って行った。
相変わらず生意気な子だけど、実は素直に謝りたかったのかな。
ホントは思っているほど嫌な子じゃないのかもしれないね。
和葉は愛莉とのいざこざが一旦解決してホッとする。
先ほどまで栞の事で頭がいっぱいだったが、素直に謝罪してくれたお陰で、心の中のしこりが1つ消えた。



