今日で農作業は三回目だから、あと残り二回頑張ればデートが出来る。
なぁんだ、五回って結構あっという間じゃん。
再来週にはもう五回目が終わってるよ。
拓真ったら、結構低めのハードルを設定してくれてたんだ。
街でデートしてる姿を頭に思い描いて、時より不敵な笑みを浮かべながらせっせと農作業。
今日は結構真面目。
妄想しても拓真に怒られないように、手はしっかりと動かす。
農作業は立ったりしゃがんだり力を使ったりで地味に大変だけど、慣れてきたらそんなに苦ではない。
先週私が畑に撒いた種は新芽として成長した。
学校で拓真に寄り付くメスどもにヤキモチ妬いている間に、太陽の光を存分に浴びて土から栄養をたっぷり吸収して立派に成長したんだね。
畑からの景色はいいし、農作業が楽しいと思えるのは、拓真が傍にいるからかな?
農作業三回目となると、畑独特の香りも自然と自宅みたいに落ち着くようになってきた。
昼休憩の時間になり、居間のちゃぶ台の側に腰を下ろすと、お婆さんはお昼ご飯用に味噌煮込みうどんを作ってきてくれた。
香りに誘われどんぶりの中を覗き込むと、豚肉、大根、人参、白菜、長ネギといった、今日も自家製と思われる野菜がたっぷり入っている。
目眩がしそうなほど味噌のいい香りが鼻に漂う。
だから、返事をするかのようにお腹がグゥと騒ぎ出した。
うどんにフゥフゥと息を吹きかけて香りをばら撒きながら、うどんを口に運んだ。
私と拓真とお婆さんの三人で囲む食卓は、まるで本物の家族のよう。
室内には咀嚼音だけが響いて、味噌の香りに包まれて食事を進めていると、お婆さんは和葉に口を開いた。
「和葉ちゃんは、どうしてうちで農作業を手伝ってくれるんだい?」
お婆さんは当然デートの条件を知らない。
拓真の方を目線を当てると、気まずそうに視線を落としたままうどんを口に運んでいる。
きっと、この話題に触れて欲しくないはず。
しかし、聞かれたからには答えなければならない。
和葉「それはね、拓真が好きで好きで仕方ないから。ここに来れば学校の日以外も会えるし。学年が違うから、学校じゃちょっとしか会えないの」
拓真「ブッ……ゴホッ……ゴホッ……」
お婆さん「へぇ。和葉ちゃんは拓真が好きなのね」
和葉「拓真、うどんを吐き出すなんて汚いよ」
拓真「お前っ! 婆ちゃんの前だぞ。少しは考えろよ」
和葉「別に間違った事を言ってない。一体、いつ付き合ってくれるのよ」
拓真「それが好きな人への態度かよ……」
お婆さんはムキになって軽く口喧嘩してる二人を見て、肩を揺らしながらクスクス笑った。
和葉「でね、今は猛アピール中なの。好きになってもらおうと思って頑張っているのに、拓真ったら全然振り向いてくれないの。和葉の魅力に気付かないなんておかしいでしょ?」
お婆さん「あらぁ、そうなの。和葉ちゃんはこんなに可愛らしい子なのにねぇ」
拓真「……もう、勘弁してくれよ」
拓真はヒートアップしていく会話に耐えられなくなると、頭を抱えながら襖を開けて部屋の外へ逃げるように出て行った。
お婆さん「あら、あの子ったら照れちゃって。ウフフ、よっぽど恥ずかしかったのね」
和葉「もー、まだ食べ途中なのにお行儀悪い。お婆さんがせっかく美味しい食事を作ってくれたのにね」
お婆さん「和葉ちゃん、あの子は口数が少ないし、無愛想なところもあるけど、本当に優しくて思いやりのあるいい子なんだよ。これからも仲良くしてあげてね」
和葉「うん! 任せて」
お婆さんが勝手に私の髪を染めた時はちょっと苦手なタイプかもって思っていたけど、こうやって何度か顔を合わせているうちに自然と打ち解けてきた。



