11月の金曜日の夜、自宅。

最近、ずっと気になってる。
あのイケメン王子が不破くんなんじゃないかと。

学校で見る限りではそんな素振りを微塵も見せないのに。
それでも、私の眼は誤魔化せない。

歩調、ストライドの幅。
肩から指先までの長さ、指の長さと形状。
特に爪の形と手入れが行き届いてるあの爪。
それにシャープなフェイスラインと薄めで艶気がハンパない唇。
肩の位置、左右のバランス。
体全体に対しての頭部、上半身、下半身の比率。

そして、掠れたハスキーなのに痺れるような甘い声。

何をとっても完璧すぎるほど瓜二つ。
私の絶対視感が『accord』だと警告音を鳴らしてる。

「ひまりっ、こんな時間に出かけるの?」
「うん、ちょっと。そんな遅くならずに帰るから」
「気をつけなさいよ?」
「うん」

寒さ対策も万全な格好で自宅を後にする。
目的地は、あの日、あのイケメン王子に出会った場所だ。

ギターケースを持ってたから、もしかしたら近くに住んでるのか。
はたまた練習場とか何かがあるのか。
友人とかと行き会った帰りなのかもしれないけど、可能性はゼロじゃない。

だから、この眼でもう一度確かめる為に……。

20時半過ぎ。
地下鉄であの場所へと向かう。

毎日のように学校で会うんだから、本人に確認したらいいんだろうけど。
『違う』と言い切られたらそれまでだし。

あのボサボサの髪に触れて、隠された顔を見ることが出来たら問題解決しそうだけど。
どうにも近寄りがたい雰囲気を醸し出してて。
それに、男子生徒の髪を触るとか、私には出来ない。

彼氏でもないのに……。