彼女の右手薬指に嵌る指輪を見えるように手を掴み、彼女の目の前に。
言い逃れは出来ないだろ。
これじゃ、俺のことを好きだって言ってるようなもんだし。
「別れた男から貰ったものを、何で着けてんの?」
「っ……」
「まだ好きだってことじゃねぇの?」
「………」
指輪からも俺からも視線を逸らした彼女。
必死に言い訳を探してるのか、視線が泳いでる。
そんな彼女の手を掴んだまま、壁にその手を押し付ける。
もう片方の手で体を挟み込むように手を着いて……。
「顔に好きだって書いてある」
「っ……」
「それに、さっき俺のキスに応えたじゃん」
「んッ……」
「あんなキスされたら、嫌いだとか別れたいだなんて嘘だって分かるって」
「っ……」
「もういい加減認めたら?……俺のこと、好きだって」
視線は逸らしても、言葉とは裏腹に、俺の声に反応するように彼女の顔と耳は赤く染まる。
だから、言わなくても分かってるんだけど。
それでも、言わせたい。
俺のことを『好き』だって。
じゃないと、『別れたい』と言ったことへの罪滅ぼしにはならねぇだろ。
「言わないつもり?」
「………」
「じゃあ、このまま襲うよ?」
「ッ?!」
「3週間も放っておかれた身にもなれ」
「………」
「結構欲求不満溜まってんだよね、俺」
「なっ……」
「早いとこ認めないと、手加減してやらないから、そのつもりで」
「っ……」
ほら、早く言いなよ。
じゃなきゃ、マジでどうなっても知らないよ?
わざと掴む手に力を入れる。
俺を苦しめた罰だよ?
真一文字にぎゅっと唇を噛み締めるひまり。
言いたくないなら、言わせてやる。
俺は彼女の耳元に呟いた。
「脅しよりも、俺に嘘吐いた方が罪が重いって知ってる?」
「ッ?!」



